国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

都市(2) ─メキシコ市─

異文化を学ぶ


メキシコ市は古代アステカ文明の首都であったテノチティトランの小島の周辺の湖を埋め立ててできた都市である。脆弱(ぜいじゃく)な地盤の上にあるためか、1985年の地震の時には、ゆっくりとした揺れが長い間続いて、危うく命を落とすところであった。

その1年前、メキシコ市のアパートに住んでいたとき、水が出なくなって、困ったことがある。都市生活のもろさを痛感したのだが、周りの人は悠然としていた。さすがアスタ・マニャーナ(また明日)の国といわれるだけあって、断水くらいではうろたえないようだ。

都市は便利であるが、何かあるともろい。しかし都市は人を引きつける魅力があるようで、人口は増える一方である。現在メキシコ市は、1900万人を超えて、世界最大の町に成長している。

国立民族学博物館 八杉佳穂
毎日新聞夕刊(2007年10月10日)に掲載