国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

都市(4) ─テーマパーク化する都市─

異文化を学ぶ


歴史をしのばせる重厚な建築に斬新な超高層ビルが隣接し、生活のにおいが染みこんだ路地裏の食堂街には、物売りや大道芸人たちが自在に出没する。ロンドンやパリ、ニューヨーク、あるいは東京や上海、そしてハノイ、バンコク、アビジャン。今や都市の盛り場は確実にテーマパーク化している。

その理由のひとつに、観光の隆盛がある。都市の魅力と活力を高めるには大勢の観光客を引き込むことが不可欠なのだ。都市は以前よりはるかに、一時滞在のよそ者に占められているのである。

だが、都市とテーマパークは違う。たとえば、都市のテーマとは結局その都市の歴史であり、複製不可能である。かくして、自分たちの固有の歴史を語り続けようとする競争が、今日も世界じゅうの都市で繰り広げられている。

国立民族学博物館 川口幸也
毎日新聞夕刊(2007年10月24日)に掲載