国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

生きものをめぐって(5) ─ オオカミ ─

異文化を学ぶ

日本ではオオカミといってもピンとこないかもしれないが、ヨーロッパではずいぶんと怖いイメージがあるようだ。

そもそも、ふるい時代からオオカミはヨーロッパの人間を熱狂させてきた。古代ギリシア・ローマでは、オオカミを残忍なイメージでとらえ、古代ゲルマン民族は、凶暴であると同時に幸運をもたらすものと考えた。そのため、オオカミは恐ろしい存在であると同時に崇められる存在であるという二重の性格をもった

ところが、キリスト教がオオカミのデフォルメされたイメージを決定的に広めてしまった。聖書の中では、神々が不従順な人間を罰するためにつかわした災厄のひとつとして描かれ、オオカミは悪魔に擬せられるようになったのだ

国立民族学博物館新免光比呂

毎日新聞夕刊(2005年7月6日)に掲載