国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

─ 魔法の鏡 ─

異文化を学ぶ


先ごろ、みんぱく(国立民族学博物館)に「魔法の鏡」(!?)がお目見えした。

もっとも、誰もが知っているグリム童話集の中の『白雪姫』に登場する、あの「魔法の鏡」ではない。今月6日から「みんぱくのインパクト」と題して、1階エントランスホールに陳列している42枚のポスター作品のことである。

これらの作品は、大阪市西区北堀江にあるデザイン系専門学校の1年生たちが、進級課題として取り組み、見事クリアしたものばかりだ。生徒たちに与えられた課題は、海外観光旅行がお手軽になった今日、みんぱくの存在感をどのようにアピールすればよいだろうか、という要求に、こたえるためのインパクトある作品を考える、というものだった。

「みんぱくって、どんなところなんだろう?」。私たちみんぱくの教員は、民族学(文化人類学)や民俗学などの学問を通じて外の世界、つまり、他者を観察している。そして、観察を通じて得た情報を、展示を通じて別の他者に紹介している。その点で、私たちの仕事は、異文化を映し出す「鏡」の役割を果たしている。しかし、そんな私たち自身の仕事や姿が、どのように見られているのかを映し出される機会は、意外にも、めったになかったのだと思う。

そのことを、42名の若者たちが教えてくれた。

国立民族学博物館 近藤雅樹
毎日新聞夕刊(2008年3月19日)に掲載