国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

嗣(つ)ぐ・承(つ)ぐ・継ぐ・接ぐ(7) ─家を継ぐ─

異文化を学ぶ


いま国立民族学博物館で、特別展「千家十職×みんぱく:茶の湯のものづくりと世界のわざ」が行われている。千家十職とは、千利休時代から茶の湯の道具を作り続けてきた十家である。当代で十一代から十七代を数える。職人とは少し異なるので職家といわれるが、ものづくりの家がこんなに続いてきたのはなぜだろう。

ふつうの日本人は、おじいさんかひいおじいさんの記憶があるくらいで、さかのぼっても五代から十代くらいだ。家を継ぐというと、親の介護などと結びつき、今の世では好まれない。家を守る強烈な意識がないと、家は続かない。

よく会社を三代続けることは困難であるという。しかし日本には、創業100年以上の会社が10万、200年以上の会社が3000以上もあるという。世界広しといえども、こんなに長く続く組織をたくさんもつ国はない。そこには日本文化を特徴づける何かがあるのかもしれない。

その一つの解答として、型の伝承をあげてみたい。十職が続いているのは、千利休から続く家元の好みの形や寸法を守り、いつでも需要に応えることができる家であるからに違いない。

国立民族学博物館 八杉佳穂
毎日新聞夕刊(2009年3月25日)に掲載