国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

伝統芸能最前線(3) ─ ワイノと若者 ─

異文化を学ぶ


南米のペルーと聞くと、サイモン&ガーファンクルの大ヒット曲「コンドルは飛んでいく」に代表されるフォルクローレがすぐに思い起される。ところが、長年、ペルーの山で仕事をしていて、こんな素敵な曲に出会ったことはない。

実際に村の祭りや誕生日の供宴で踊り奏でられるのは、ワイノという単純な歌謡舞曲なのである。その起源は植民地期にさかのぼり、歌詞、楽器、踊り方に地方色が見られる。 この種の伝統的音楽や踊りは、農村から都市への人口移動や生活の近代化の中で廃れそうなものだが、実際には電子楽器などでアレンジされた新しいワイノが、都市の若者の間でも人気を博している。先住民言語も昔の暮らしも知らぬ若者にとって、自らのよりどころはやはりアンデス的世界なのであろう。

国立民族学博物館 関 雄二

毎日新聞夕刊(2006年2月15日)に掲載