国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

伝統芸能最前線(9) ─ 「洞経(ドンジン)」音楽 ─

異文化を学ぶ


「洞経」は道教の学問の神、文昌(ウェンチャン)を祭り、儒教と仏教の要素も融合している音楽だ。元代と明代の間に四川、江西、南京と北京から雲南に伝播(でんぱ)してきた。

雲南の洞経は男性の教養と娯楽として演奏されるが、年中行事や冠婚葬祭の際に、平安と豊作の祈願として演奏されることもある。

調査地の保山市騰沖県和順郷の洞経は200年余の演奏の歴史を持ち、華僑とともに国境を越えてミャンマーにも根を下ろしている。文化大革命のころ洞経は封建文化として否定され、楽譜も紛失したが、その後、ミャンマーの華僑から洞経のテキストや楽譜が送られてきて演奏活動が再開した。現在、民族文化大省という雲南省政府の政策の下に、洞経は地域文化として再評価されている。

国立民族学博物館 韓 敏

毎日新聞夕刊(2006年3月29日)に掲載