国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

道草、足止め、回り道

(2)新発見のきっかけ  2010年10月13日刊行
印東道子(民族社会研究部教授)

深い文化層を発掘する(ファイス島ポワ遺跡)
オセアニアでの考古学調査は、人間が住んでいた痕跡を探して島中を歩き回るところからはじまる。エジプトやアンデスのように大型の石像建造物でもあれば、すぐに遺跡だとわかるが、小さな島の遺跡は目立たない。

過去の人の暮らしを「ひもとく手がかり」は、地表に落ちている土器や石器のかけらをはじめ、小さな釣り針や直径5ミリほどの貝製ビーズなどの人工遺物や、骨や貝などの「食べかす」などがある。このような遺物が多く見つかる場所の地下には遺跡が眠っている確率が高い。

実際に発掘する場所を決めるには、そこが砂浜の近くであるか、背後にイモ類を栽培できる土地があるかなど、総合的に判断する。もっとも、いつも古い遺跡が見つかるとは限らない。

現在、継続して調査を続けているミクロネシアのファイス島では、3メートルを超す深い堆積(たいせき)から新発見が続いている。実はこの遺跡、1991年の調査終了間際に、回り道をして帰る途中で見つけたものだ。ファイスでは毎日のように大きなカニが穴を掘り、土と共に遺物も掘り出してくるので、前にはなかった遺物が地表に落ちている可能性が高い。まさに、回り道に助けられた新発見といえる。
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