国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

道草、足止め、回り道

(4)今夜は泊まれよ  2010年10月27日刊行
太田心平(研究戦略センター助教)

家で夜を語り明かす韓国人
韓国人と仲良くなるには、どうすればいいか。韓国人たちがよく言うことには、「ともに飯を食べ、酒を飲み、一緒に寝ること」だそうだ。家に泊まれというのである。

ただ、そう言われても、日本人の私は最初のころ随分と遠慮をした。酒臭い状態で、真夜中に突然、よく知りもしない人様の家に上がり込むなんて! 第一、自分の宿所にだって帰れるのに、だ。帰って眠った方が落ち着くし、翌日の予定も楽。はっきり言って、お断りしたいお誘いだった。

だが、こうした無駄な外泊を何度かくり返すうち、やはりこれが韓国人と仲良くなる最良の方法なのだと、気が付いた。相手の部屋を眺め尽くし、家族とも知り合えば、交わす話題も広がり、互いの距離は近づくのだ。

どこの国でも、話題を共有することは人と仲良くなる最短コースだ。それに加え、人と仲良くなるためには、何らかの無駄を共有してみることも有効。ならば、出会った相手と素早く無駄を共有してしまうことは、効率よく人とつきあう手立てだとも言える。

せっかちな国民性の韓国人は、初めて会った人にでも、泊まっていけと足止めをする。そうすることで、交流を効率的にリードしてくれているのである。
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