国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

ずらりと並べる

(7)組み合わせは無限大  2012年6月21日刊行
上羽陽子(国立民族学博物館助教)

品目ごとに並んだ極彩色の衣装=インド、グジャラート州で、筆者撮影

女性たちは、多くの衣装から、より見栄えのする組み合わせを真剣に選んでいる。何しろ祭りは9日間も続く。

インド西部のグジャラート州では、ヒンドゥー教の女神を祀(まつ)る祭礼時期、女性も男性も色とりどりの衣装を身につけ、ダンスを女神に奉納する。

ナヴァラートリと呼ばれるこの祭礼は、インド全域でみられるが、この地域では特にガルバと呼ばれるダンスが有名だ。毎晩異なる衣装を身につけるため、街には衣装の露店がずらりと建ち並ぶ。

女性であれば上着とスカート、胸を覆う一枚布が基本の組み合わせとなるが、露店では一揃(そろ)えで売ってはいない。全てを揃えるためには、品目ごとに店々を渡り歩かなければならない。その距離は数百メートルにもわたる。これが予想以上に大仕事である。

色あわせは商人が主導権を握る。お客がすでに購入したアイテムを確認して、次から次へとそれに似合う商品を突きつける。お客もこれに負けじと、自分の好みを主張して、気に入った商品の値段交渉を始める。怒鳴り声など当たり前だ。

そんな店先から一歩離れて露店の通りを眺めると、この地方特有のミラー刺繍(ししゅう)がきらめいている。まるで、喧噪(けんそう)を楽しんでいるかのように。

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