国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

韓国の食

(3)混ぜて分かち合う  2015年10月15日刊行
朝倉敏夫(国立民族学博物館教授)

きなこ餅とアイスクリームがトッピングされている「パッピンス」=ソウルで7月、筆者撮影

今年7月下旬、女子職員2人と共に韓国国立民俗博物館(ソウル)に行った。暑い日だったので、パッピンス(氷あずき)をおごることにした。

韓国のパッピンスは、注文すると、ふつう「匙(さじ)は何本さしあげますか」と聞かれることからわかるように、一人で食べるには量が多い。これを、まず最初に混ぜてから食べるのが、韓国流だ。

さて私は、はたと考えた。おじさん1人と若い日本の女性が2人。一つ注文して3人で分けて食べるとすると、日本人の女性は嫌がるだろう。二つにして、一つを女性2人で分けて、もう一つを私1人で食べるのも、けちなおじさんと思われるのではないか。そこで、三つ注文することにした。案の定、「匙は6本ですか」とたずねられた。

カウンターでパッピンスを受け取り、席について食べ始めた。どうも、周りの視線が気になる。1人でそんなに食べるのかいといった雰囲気である。

隣の席では、女性4人が一つのパッピンスを分け合って食べている。向こうの席では、おじさん2人が、一つのパッピンスをぐちゃぐちゃに混ぜた後、容器をもう一つもらって取り分けて食べている。

「混ぜる」も「分かち合い」も韓国食文化のキーワードである。

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