国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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海洋考古学の世界

(2)四爪錨の謎と魅力  2020年10月10日刊行

小野林太郎(国立民族学博物館准教授)


屋良部沖海底遺跡で最も大きい6号四爪錨=沖縄・石垣島で2012年、山本遊児氏撮影

石垣島の屋良部沖海底遺跡で見つかった七つの四爪錨(よつめいかり)。その謎を追って暗礁に乗り上げた私たちが目を付けたのは、博物館に所蔵されていた近世期の絵図だった。当時の那覇港や行き来するさまざまな船を描いたものも多く、描写も詳細だ。その中から、ついに四爪錨を搭載している進貢船を発見したのである。

古文書の調査からも、1685年に台風により屋良部沖で遭難した進貢船があったことが判明する。石垣島は進貢船による航海ルートの外だが、難破したのであれば話は別だ。これらの発見から四爪錨は、やはり琉球船によって運ばれた可能性が高くなってきた。このように海洋考古学の対象は海中だけでなく、博物館なども重要なフィールドとなる。

錨と壺だけが見つかった海底遺跡。一見、地味である。しかし、そこに秘められた歴史的ロマンは一般の人々をも魅了するのではないか。そんな思いから、まずは地元のダイバーたちにその魅力や遺跡見学のポイントを伝える講習会を毎年開催してきた。石垣島はダイビング観光の名所。近年では講習を受けたダイバーたちが、一般ダイバーを伴って遺跡見学し、同時に遺跡の状況チェックも担いだしてくれている。沈没船そのものはまだ見つかっていないが、海底遺跡の持つ文化遺産としての魅力は計り知れない。

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