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ネットと観光 模索のただ中 日本の地方にも韓国人観光客

2026年6月1日刊行
太田心平(国立民族学博物館准教授)

3年前の冬、宮崎市で昼食時にうなぎ屋さんへ行った。市街地から離れた、家族経営の小さな店だ。私の注文が済んだところで、韓国語を話す旅行者数人が入店してきた。店の方が「もううなぎが売り切れです」とおっしゃったのに、言葉が通じない。たまたまいた私(韓国研究者)が通訳し、事なきをえた。

驚いたのは、その後も韓国からの旅行者がひっきりなしに来ること。まだ昼なのにその日のうなぎが全部なくなったのも、朝から同様のお客が大勢来たからだそうだ。「なぜうちに?」と戸惑う店の方に代わって、ある旅行者に聞いてみた。韓国の旅行ブログでその店が絶賛されているからとのことだった。

韓国では旅行案内のブログや動画が大人気だ。日本のように何度も行く旅先なら、行ったことがない街や店の情報集めに、少なくとも半数以上が利用しているという調査結果もある。

このおでん屋さんも、ブログの効果で、客の過半数が韓国人。

高松市にあるこのおでん屋さんも、ブログの効果で客の過半数が韓国人だ
=高松市・2025年2月、筆者撮影

ただ、旅行情報の配信は単なる趣味ではない。画面に表示される広告から収入を得るための産業だ。閲覧数を稼ぐため、他が扱っていない情報を載せる競争すら生じる。こうして、見出しには「知る人ぞ知る名店」とか「次にはやるのはここ!」などの文言が躍る。この結果の一例が、冒頭のお店の不可解な活況ぶりだったようだ。

これでは店側や地域の迷惑かもしれず、「韓国のブロガーや動画配信者はけしからん」という声も出かねない。ただ、私には別の苦い経験もある。日本の有名な旅行案内書を手に欧州の小都市を旅行中、その本で知った店の店主が「勝手に載せられた」と困っているのを目にしたこともあるのだ。こういうことは、どうやら韓国やネット社会だけの話でもないらしい。

近年、日本の各自治体の観光局や商業組合には、問題の発端を逆に利用する動きもある。例えば、地域密着型の小料理屋やスナックは、日本の映画やドラマによく登場し、外国人の関心をひくが、そこに観光客が押し寄せると、店側や常連客との不和が生じかねない。そこで、外国人観光客を歓迎する店だけを地元で選んで配信者に紹介し、誘導してもらおうというのだ。

韓国の配信者の側も動いている。一例に、ある旅行系の動画配信者は、より公正な番組作りを同業者と議論したのを機に、紹介する店について、必ず責任者に事前相談するようになったという。また、取材許可のお礼として、店のメニューの韓国語訳を渡す活動もはじめたそうだ。

利用者も賢くなりつつある。配信者の情報だけを信じず、他の利用者が寄せたレビューも読んで、偏った情報に惑わされない努力をする人が増えている。

観光する側も、おもてなしの側も、そして両者を橋渡しする人々も、技術を飼い慣らす工夫のまっただ中なのである。