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タバスキ――セネガルの犠牲祭

セネガルでタバスキと呼ばれる犠牲祭は、ムスリムの2大祝祭のひとつで、ヒジュラ暦の巡礼月 (イスラム圏で用いられる太陰暦の12番目の月)の最終日に祝います。今年はセネガルでは2026年5月28日に行われました。神アッラーへの絶対的な信仰心を示すために 息子を犠牲に捧げようとした預言者イブラーヒームの服従を象徴して、羊を捧げる習慣があります。

この日には守るべき一連の決まり があり、沐浴をして体を清め、清潔な衣服、できれば新品の白い服を着ることが勧められています。セネガルは「着だおれの国」と評されるほど人びとの衣服への関心が高く、普段からもおしゃれに気を使っています。タバスキは老若男女を問わず最大かつ最高におしゃれをする日でもあり、セネガルでは白色に限らず、自分好みの色とデザインで伝統的な衣服を注文してこの日を迎えます。

しかし昨今、生地を選び仕立屋に注文する費用も高く、新品を誂えることは経済的な負担が大きくなりました。そこで、生成AI が大活躍しています。ユーザーは自分の写真をアップロードして、いろいろな指示を出します。すると、瞬く間に、豪華で華やかな衣装を身に着けた写真ができあがるのです。人びとはこの画像をソーシャルメディアで共有して祭りの雰囲気を楽しみます。生地を1メートルも買わずに、唯一無二のデザインを生み出すことができるのです。

タバスキはまた家族が集まる大切な機会で、一頭の羊を屠る習わしです。しかし仕事や学業などで家族から離れて暮らしている人も少なくありません。そういった事情は特別なものではなく、タバスキといえども家族と過ごせないことをやむなしと考える風潮が広まりました。ここでも デジタル技術が活躍し、人びとはビデオ電話でつながりを保っています。

神聖である宗教的な祝祭に デジタル技術が一役買っていることは驚くべきことではないかもしれません。今をさかのぼる40~50年前、イスラームの祈りのなかで神への賛美を繰り返し唱えるために、ボタンを押す方式のカウンターを使うのが流行りました。従来は数珠を使って人びとは唱えた回数を数えていましたが、カウンターの利便性は信仰の深みを妨げるものではなかったようです。私は宗教上の厳かさと数珠が結びついているように感じていたので、不思議な思いでその変化を眺めていましたが、セネガルの人びとは進歩する技術に寛容かつ貪欲なのかもしれません。

デジタル技術は生活習慣に小さな変化を生み、さらに大きな変化となってわれわれの倫理上の概念にも影響をもたらす可能性があります。 デジタル技術と宗教がどのような関係性を作ってゆくのか大いに興味をそそられます。犠牲の羊の将来はいかに?

三島禎子(国立民族学博物館准教授)




関連写真

ハレの日に着飾った少女たち(筆者、セネガル、1993年)

タバスキのために大事に育てられる羊(筆者、セネガル、1993年)