国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2005年2月6日(日)
《機関研究成果公開》プレ・シンポジウム「ユーラシアと日本:交流とイメージ」

  • 日時:2005年2月6日(日)
  • 場所:国立民族学博物館4階 大演習室
 

研究の目的と枠組・方法

ユーラシア大陸の諸民族と日本とは、歴史上、密接な交流を行なって来た。交流は、交易、人口移動、技術や文化面での相互作用等、広範な範囲に及んだ。これら相互交流に関する諸問題については従来、狭い地域範囲内で個別的に検討されがちで、しかも文明地帯(中国)から非文明地帯(日本を含む周辺地域)への一方的な流れとしてしか捉えられてこなかった。本研究の目的は、過去の問題点をふまえて、ユーラシア大陸にまたがる広大な地域を視野に入れて、モノと人と情報の往来に注目したユーラシアと日本との相互作用に関する新たな総合的な比較研究を行うことにある。
本研究は、ユーラシアと日本との関係史について、「交流とイメージ」を柱にすえながら、具体的には、人口移動、交易、権力システム、そして表象の4つのテーマを柱にすえて研究していく。研究期間は平成16年度から6年間とする。形態は国立民族学博物館(以下、民博と略称)と国立歴史民俗博物館(以下、歴博と略称)を主体とする機構内連携研究とする。原則として国際シンポジウムを平成17年度以降毎年開催し、参加者がペーパーを持ち寄って討議を行い、成果を出版するという形態をとる。なお、その準備のために平成16年度にプレ・シンポジウムを行い、また研究の最終年度に当たる平成21年度には総括のための国際シンジウムを行う。
研究対象とする時代は、近世とくに19世紀から現代に至る時代を重点的に扱う。この時代を扱う理由は、とかく「伝統的」と思われがちな事象が近世に形成される場合が少なくないが、そのことを検証するとともに、近世に形成された事象がいかにして現代の伝統とされ、それにどのような意味と機能が付与されたのか検討を行うことにある。現在、国際社会間の交流は、情報通信技術の飛躍的な発展によって、錯綜化・高速化しているために、かえって相互理解が難しくなるという状況にある。しかも、往々にして、その難しさの原因を「伝統」に帰してしまい、深い歴史が深い溝を呼ぶかのような言説が生じる傾向がある。しかし、この研究を通して、今いわれている「伝統」はそれほど歴史深度の深いものではないことを示しつつ、複雑に絡まったかのように見えるユーラシアと日本の相互関係を解きほぐすような新たな展望と認識をもつことが可能となるであろう。
なお、研究方法として、民族学(文化人類学)と歴史学からの学際的研究に重点を置くが、それぞれの方法のもつ強みを生かしながら、それだけでなく従来にない新たな試みをも行う。民族学側からは、現地調査を通じて口頭伝承、習俗・技術・芸能・民具等に関する個人や集団の記憶としての伝承を掘り起こし、文字媒体・非文字媒体によるものの双方に目配りし両者を有機的に関連付けて研究を行う。歴史学側は民族学や民俗学の最新の理論や視点をも取り入れて、文献や事物の歴史的解釈に新たな見直しをする。口頭伝承をはじめ従来の歴史文献とは異なる歴史認識モデルをも考慮する必要があろう。さらにテクストをもつこと自体の意味、テクスト分析のさまざまなスタンスなど歴史認識におけるテクストに関わる諸問題をも視野に入れる予定である。

スケジュール

10:00~10:10 開会式と出席者紹介 塚田誠之(民博)
10:10~10:20 挨拶 松園万亀雄(民博)
10:20~10:30 挨拶 西本豊弘(歴博)
10:30~10:40 「人間文化研究機構の連携研究について」  伊井春樹(機構理事)
第1セッション 座長:笹原亮二(民博)
10:40~11:20 報告1
「中国南部地域を中心とした人口移動・権力システム・表象」(仮題) 塚田誠之
11:20~12:00 報告2
「政治と歴史に化したシャマニズム―モンゴルのチンギス・ハーン祭祀が表象する北・中央アジア」(仮題)
大野旭(静岡大、民博共同研究員)
<昼 食>  
第2セッション 座長:小池淳一(歴博)
13:30~14:10 報告3
「19世紀における日本の「発見」―民衆運動と文芸表象」 久留島浩(歴博)
14:10~14:30 コメント
趙景達(千葉大学)
<休 憩>  
15:00~17:00 討論
座長:笹原亮二(民博)、小池淳一(歴博)
17:00~17:10 閉会式 久留島浩(歴博)