国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2005年10月28日(金) ~10月28日(金)
《機関研究成果公開》研究フォーラム「初期録音資料群の言語学・民族音楽学研究上の価値―1900年パリ万博時の日本語録音を焦点に―」

  • 日時:2005年10月28日(金) 14:00~17:00
  • 場所:国立民族学博物館 第6セミナー室
  • 主催:国立民族学博物館機関研究「芸能の映像記録の可能性と課題
        文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究「我が国の科学技術黎明期資料の体系化に関する調査研究」(「江戸のモノづくり」)録音資料研究班
        東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 GICAS(アジア書字コーパスに基づく文化情報学の創成 COE拠点) PHONARCプロジェクト
 

趣旨

本ワークショップは、機関研究「芸能の映像記録の可能性と課題」、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所「GICAS」 PHONARCプロジェクト、および科研費特定研究「江戸のモノづくり」録音資料研究班の共同主催で、同研究班が発見した現存最古の日本語録音である1900年パリ万博時のロウ管録音(聖書朗読、会話、歌舞伎台詞、三味線・篠笛演奏など)の紹介を中心に、そうした古い録音資料の持つ言語史・文化史研究上の価値について考え、併せて、そのような資料群の保存・復元・蓄積・公開等に関わる諸問題について考えていこうとするものです。

当該録音を含めて古い録音資料を多数所蔵する民族音楽学研究所CNRS Laboratoire d'ethnomusicologie, Musee de l'Homme, Paris のPitoëff博士(民族音楽学)をゲストに招き、同所の所蔵する歴史的録音コレクションを紹介いただきます。また、清水(日本語史)と児玉(芸能史)の解説付きで、1900年パリ日本語録音を全てお聴きいただく予定です。

プログラム

14:00~15:20 報告および質疑応答(報告はフランス語、通訳付き)
パリ民族音楽学研究所所蔵の歴史的録音コレクション
Pribisiav Pitoëff (民族音楽学研究所(パリ)主任研究官 フランス民族音楽学会事務局長)
15:40~17:00 報告および質疑応答(日本語)
1900年にパリで録音された現存最古の日本語録音資料群
清水康行(日本女子大学文学部日本文学科)
児玉竜一(日本女子大学文学部日本文学科)

成果報告

機関研究「伝統芸能の映像記録の可能性と課題」、科研費特定研究「江戸のものづくり」(録音資料研究班)及び東京外国語大学AA研COE拠点「GICAS」PHONARCプロジェクトの共催で、ワークショップ「初期録音資料群の言語学・民族音楽学研究上の価値-1900年パリ万博時の日本語録音を焦点に」を開催した。19世紀末に録音技術が生まれてから、世界各地で言語・音楽などの貴重な記録が残されてきた。しかし、それらをシステマチックに保存管理し、研究資料として活用するためのサウンド・アーカイブは、保存・管理・サービスのいずれの面においても、様々な問題をかかえている。しかし、研究者は、調査・記録には熱心だが、その保存管理やサービスのための共同のシステムの構築にはしばしば無関心である。今後、研究に資するサウンド・アーカイブの構築には、研究者の主体的なかかわりが必要であろう。このワークショップでは、言語研究者や音楽研究者らの間で、フランスのサウンド・アーカイブが所蔵する資料とその現状について情報を共有し、サウンド・アーカイブの諸問題について検討した。

特に、人類博物館民族音楽学研究所が管理する、1900年パリ万博時に録音された言語及び音楽資料は興味深いものだった。清水康行教授によれば、同資料は、現在確認されている最古の日本語録音である。人類学者アズレーによって録音され、比較的詳細なデータが記されている点でも特筆される。長い歴史をほこるウィーンの録音アーカイブの初期録音における記録カードも、アズレーが考案したものに倣ったものである。さらに、録音されたことばをテクスト化した資料も一部に付されている。一方、同資料はパリ人類学協会が人類博物館の民族音楽学研究所に寄託しているものであり、研究所の一存で公開できない状況にある。学術資料の公開における権利関係の難しさについても明らかになった。今回は、言語学者と音楽学者が参加し、両分野にまたがる貴重な資料について情報を共有できたことも大きな成果の1つである。