国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2012年11月16日(金) ~11月17日(土)
国際シンポジウム「大規模災害とコミュニティーの再生」

チラシダウンロード[PDF:1.54MB]
  • 開催日:2012年年11月16日(金)~17日(土)
  • 会場:国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 事前申込:不要
  • 参加費:無料
  • 定員:50名(先着順)
  • 言語:日本語・英語の同時通訳
 

趣旨

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震を契機とした東日本大震災の被災地では、復興計画が策定されてもその実施に向けての多くの課題を抱えた状況がいまだ続いている。また、その復興活動をオールジャパンの体制でその復興活動を加速させる取り組みは最重要課題に位置づけられたものの、混迷化する政治状況や復興財源確保の困難さもあって、復興は遅々として進展を見せていない。その一方で、次に予測されている大規模災害にどのように備えるのかという課題への取り組みもさらに推し進めていかなければならない。そこで、本シンポジウムでは、国内外の被災地における「ローカルメディアによる情報発信」、「文化遺産の復興支援」、「災害の記憶の継承」の活動に注視し、大規模災害からのコミュニティの再生について、海外の大規模災害への取り組み事例も踏まえながら考えたい。

プログラム

11月16日
12:00 開会
総合司会:園田直子(国立民族学博物館)
12:00~12:10 館長挨拶
須藤健一(国立民族学博物館)
12:10~12:20 趣旨説明
日高真吾(国立民族学博物館)
第1部:大規模災害時にローカルメディアが果たす役割(担当:杉本)
12:20~12:30 セッション趣旨解説
Dr. Vinod Pavarala(Univ. of Hyderabad)
12:30~12:55 東日本大震災にけるローカルメディアとコミュニティの関わり
吉富志津代(大阪大学特任准教授)
12:55~13:20 東日本大震災における外国人支援と平時の多言語・多文化情報発信
須藤伸子((財)仙台国際交流協会)
13:20~13:45 大規模災害時に果たしたローカルメディアの役割-海外に事例から1
Imam Prakoso(Currently involved with the Kinjera Project)
13:45~14:10 大規模災害時に果たしたローカルメディアの役割―海外に事例から2
Dr. Uajit Virojtrairatt
14:10~14:25 日本からのコメント
杉本星子(京都文教大学)
14:25~14:40 海外からのコメント
Ashish Sen (AMARC Asia-Pacific)
14:40~15:00 休憩
15:00~16:00 パネルディスカッション
(コーディネーター:Dr. Vinod Pavarala(Univ. of Hyderabad)
16:00~17:00 企画展「記憶をつなぐ―津波被害と文化遺産」の見学
11月17日
第2部:災害から文化遺産が復興する意義(担当:日髙)
10:00~10:10 セッション趣旨解説
日髙真吾(国立民族学博物館)
10:10~10:40 東日本大震災で被災した有形文化遺産の復興支援
日髙真吾(国立民族学博物館)、加藤幸治(東北学院大学)、沼田愛(東北学院大学)
10:40~11:10 洪水で被災した博物館施設の支援について―タイ事例から
Incherdchai Jarunee(National Museum in Honor of H. M. the King's Golden Jubilee)
11:10~11:40 東日本大震災と無形文化遺産
橋本裕之(追手門学院大学)
11:40~12:10 アチェ津波博物館の活動
Rahmadhani(Aceh Tsunami Museum)
12:10~12:20 休憩
12:20~13:20 パネルディスカッション
コーディネーター:小谷竜介
13:20~14:00 昼食
第3部:コミュニティにおける災害の記憶の継承(担当:吉田、林)
14:00~14:10 セッション趣旨解説
吉田憲司(国立民族学博物館)
14:10~14:40 災害の記憶を残す
林勲男(国立民族学博物館)
14:40~15:10 津波の記憶を巡る―津波工学の視点から
佐藤翔輔(東北大学)
15:10~15:40 ハリケーン カトリーナとリタの記憶を残す
Carl Lindahl(Univ. Houston)
15:40~16:10 ハリケーン カトリーナとリタを博物館で記憶する
Karen T. Leathem(Louisiana State Museum)
16:10~16:20 休憩
16:20~17:20 パネルディスカッション
コーディネーター:吉田憲司(国立民族学博物館)
17:20~17:30 休憩
17:30~18:30 全体討論
コーディネーター:杉本良男(国立民族学博物館)
18:30~18:40  閉会挨拶
実行委員長:杉本良男(国立民族学博物館)

お問い合わせ

  • 国立民族学博物館日高研究室
  • 〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
  • MAIL. shinsaisympo★idc.minpaku.ac.jp ※★を@マークに置き換えて送信してください。
  • TEL. 06-6876-2151(土日祝を除く 9:00~17:00)

研究成果の概要

シンポジウム初日は、冒頭の趣旨説明ののち、第1部「大規模災害時にローカルメディアが果たす役割」が行われた。本セッションでは、東日本大震災及びインド洋津波災害時におけるローカルメディアが果した、あるいは果たすべき役割について、日本、インドネシア、タイからの事例報告と、インド、日本の事例を念頭においたコメント、討論、総括が行われ、いずれの地域でもローカルメディアの機動力と柔軟性が効果的であり、より被災者に寄り添った役割を果たしたことが指摘された。
二日目は第2部「災害から文化遺産が復興する意義」について、とくに博物館を中心とした日本、インドネシア、タイにおける経験と、復興に果たす意義についての報告と討論が行われ、有形、無形の文化遺産の復興が果たす役割の重要性が指摘された。つづく第3部「コミュニティにおける災害の記憶の継承」においては、博物館や公共施設を拠点にした記憶の継承について、日本とアメリカの事例報告及び討論が行われ、とくにハリケーン後のアメリカの博物館の事例が、今後の博物館の可能性の一つとして関心を集めた。最後に全体討論が行われ、各セッションをまたぐ比較と討論を通じて、今後の展開について実践的、学知的に考えていく方向性が議論された。
今後もアカデミックなレベルにおいて、人類学を中心にした、広く外国の比較事例を含めた学際的、総合的な検討の必要性があらためて強調され、全体が閉じられた。今回は、日本、アメリカそれにアジア諸国のさまざまな事例が報告され、またこれらを比較、総合した議論が熱心に行われた。日本の研究者、実践者を含めて、各国からの参加者にも強いインパクトを与える意義があった。民博における復興関連プロジェクトは今後とも継続されるが、将来を見すえたさらなる研究の展開をはかる必要があることが確認された。今後の展開について実践的、学知的に考えていく方向性が議論された。