国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2013年1月27日(日)
国際公開フォーラム「古代文明の生成過程―マヤとアンデスの比較」

チラシダウンロード[PDF:865KB]
  • 日時:2013年1月27日(日) 13:00~16:00[開場12:30]
  • 場所:キャンパス・イノベーションセンター東京(1階 国際会議室)
    東京都港区芝浦3-3-6
    (JR山手線・京浜東北線 田町駅から徒歩1分  都営地下鉄浅草線・三田線 三田駅から徒歩5分)
  • 定員: 100名(先着順)
  • 参加費:無料 申し込み不要
  • 主催:国立民族学博物館・科学研究費補助金基盤研究(S)「権力の生成と変容から見たアンデス文明史の再構築」(代表 関雄二)
  • 共催:科学研究費補助金新学術領域研究「環太平洋の環境文明史」(代表:青山和夫)
  • 協力:古代アメリカ学会
 

趣旨

アメリカ大陸では、中米に位置するメキシコやグアテマラを中心にマヤ、アステカなどの古代文明が、南米のアンデス山脈添いにはインカに代表されるアンデス文明が成立しました。本フォーラムでは、中米のマヤと南米のアンデスをとりあげ、この地で長らく研究に携わってきた日本人研究者に最近の調査成果を報告してもらうとともに、両地域の古代文化の特性について、比較してみたいと思います。近年、いずれの研究分野でも、学問領域の細分化が進み、個別的なデータの蓄積は図られつつあるものの、普遍化や一般化を敬遠する傾向が見られます。本フォーラムはこうした現代の学問潮流に一石を投じ、比較の視座を確保しながら、古代文明の生成過程を改めて考察しようと考えています。

プログラム

13:00~13:05 あいさつ
13:05~13:35 「遠隔地交流と複雑社会の形成―アンデス中央高地の事例から―」
松本雄一(国立民族学博物館)
13:35~14:05 「アンデス文明における権力の発生―最新成果報告」
関雄二(国立民族学博物館)
14:05~14:35 「石器研究からみるマヤ文明の盛衰」
青山和夫(茨城大学)
14:35~15:05 「セイバル遺跡の発掘成果とマヤ文明の起源」
猪俣健(アリゾナ大学)
15:05~15:15 休憩
15:15~16:00 ディスカッション

お問い合わせ先

〒565-8511
大阪府吹田市千里万博公園10-1
国立民族学博物館 関研究室
TEL: 06-6878-8252  FAX:06-6878-7503
E-mail sekiken★idc.minpaku.ac.jp ※★を@に置き換えて送信ください。

研究成果の概要

中米のマヤ文明と南米のアンデス文明を対象に、最新の調査成果を発表し、さまざまな観点から分析できた意義は大きい。マヤについて、猪俣は、近年発掘調査を実施したセイバル遺跡のデータをもとに、先古典期における低地マヤ社会では、従来考えられていたよりも古くから公共建造物とそれに伴う埋納儀礼が検出され、すでに社会の複雑化が進んでいたメキシコ湾岸地域と地域交流を持っていたことを明らかにした。青山は、石器分析の観点から、社会の複雑化と石材の入手、および石器製作の統御とが関連することを示し、その生産体制が社会的エリート自身に属するものであることを指摘した。松本は、自身の発掘データをもとに、かつて汎アンデス的に広がったと考えられたチャビン文化の実態を地方政体の自立性の点から問いなおし、関は、チャビン同様にアンデス文明初期に出現する大規模建造物を築いた社会の成立基盤に地域性を見いだす発表を行った。
とくに、マヤ、アンデス双方の文明ともに、紀元前にさかのぼる初期段階で公共建造物が出現し、それが時代とともに大規模化していくことが共通点として押さえられた。しかし、そこではマヤとアンデスそれぞれの地域の歴史的背景や生態環境の違いを考慮する必要もあり、村落の共同祭祀空間であったものが、儀礼、饗宴の結果生じる廃棄物を埋め土にしながら建物が拡大する点では同じであっても、無意識の産物であるのか、あるいは指導者の意図により、祖先崇拝を想起させる埋葬や儀礼用具の埋納などの結果、巨大化したのかなど、深く論議する必要性が感じられた。またそうした建造物の巨大化の過程で、王とは特定できずとも、指導的リーダーの誕生が認められる点でも両文明で共通性を持つが、リーダーの権力基盤については、マヤでは一般に石器生産に多くを投資するのに対して、アンデスでは遠隔地交易や金属器製作など、権力者が操作する資源に地域差があるなど、両文明間の違いも大きいことが確認された。こうした比較により、各文明において注目すべき新たな視点が浮き彫りにされた点は大きな収穫といえる。