国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
受賞年度
2020年度
受賞者
本文
鈴木英明准教授が「大同生命地域研究奨励賞」を受賞
2020年8月20日掲載

 

この度、グローバル現象研究部の鈴木英明准教授が、「第35回大同生命地域研究奨励賞」を受賞しました。
  • 贈呈日:令和2年8月17日(月)(国立民族学博物館にて)
  • 受賞者:鈴木英明(国立民族学博物館グローバル現象研究部准教授)

 

受賞理由
鈴木英明氏は、地域研究の分野にインド洋西海域世界という新たな領域を開拓し、歴史学を基礎として文化研究と社会研究を総合する重厚で精緻な実証研究を展開してきた。この新たな地域研究のユニットを創成するという挑戦的な試みに成功しただけでなく、以下に述べる独創的な成果をあげた点は、現代日本の地域研究に大きな貢献と刺激をもたらしたといえる。
従来の地域研究が対象としてきた領域は、主要には、陸地を対象にして設定され区分けされた地域ユニットであった。しかしながらこうした地域研究観では視野に入りにくい世界がある。それは、海を跨ぐヒト、モノ、情報、カネの流れ、それらの移動性のなかで積み上げられてきた人々の膨大な生の営みでありその軌跡としての歴史である。鈴木氏は、この世界に焦点を据え、その空間的な広がりを動態的に捉えることでインド洋西海域世界という新たな地域ユニットを提唱してきた。これは従来の陸を歴史叙述の中心に据えてきた歴史観(陸地中心史観)を単純に批判して、海を中心に据えた歴史観(海域中心史観)への移行を提唱しているのではない。むしろ、事物や価値意識の移動性そのものに着目するところから、社会によって恣意的に設定される地域の空間的、あるいは時間的な固定性に対して異議を申し立てることで、地域研究の脱中心化と相対化・流動化をはかろうとする野心的な試みだといえる。
鈴木氏は13か国における文献資料調査および27か国にも及ぶ現地調査によって、この地域世界に密着し、そこに生きる人々を観察し共感するなかで得た着想を歴史研究に応用する手法は、地域研究の新たなダイナミックな可能性を体現しているといえよう。(大同生命地域研究奨励賞 業績紹介抜粋)

 
 

大同生命地域研究奨励賞:
大同生命地域研究賞は、公益財団法人大同生命国際文化基金により設けられた賞で、「地球的規模における地域研究」に貢献した研究者を顕彰するものです。そのうち「大同生命地域研究奨励賞」は、地域研究の分野で新しい展開を試みるとともに、今後さらに活躍が期待される研究者が対象になります。

大同生命地域研究賞贈呈 左が鈴木英明准教授
 
贈呈を受ける鈴木英明准教授
 
国立民族学博物館にて贈呈されました。左から2番目が鈴木英明准教授