国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別研究(1978-2000)

我が国の民族学研究の拠点として、大局的見地から現時点での最重要課題をとりあげ、長期的・計画的に進める研究です。

※特別研究は2000年度をもって終了いたしました。

二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容(1991-2000)

趣旨
この特別研究は、1981~1990年度特別研究「現代日本文化における伝統と変容」の新しい展開として、開始された。さきの特別研究が、日本を中心とした視点から20世紀(昭和史)における社会・文化・背活用式の変容を追求したものであったのに対し、この特別研究は、これまで個別的に調査・研究が進められてきた世界の諸民族文化を総合的に比較することによって、世界の文化にとっての20世紀の意味を分析し、21世紀の人類文化像への展望をひらこうとこころみるものである。
成果
これまでの研究成果を要約すれば、20世紀には民族文化の変容に大きく影響を与えた2つの潮流が認められる。1つは国民国家主義を前提とした国際社会の流れであり、いま1つは科学技術の発達による生活様式の変化である。20世紀前半の世界は、西欧列強や日本によるアジア・アフリカ諸民族の植民地支配と2度の世界大戦、後半では東西冷戦構造のもとでの独立と国民国家形成への模索が、各地の諸民族のあり方に大きく影響した。そうした中にあって、科学技術の発達の成果は徐々に世界各地に浸透し、各民族の伝統的な生活様式を大きく変える働きをした。とりわけ、都市における建築や交通、情報通信機器の発達と普及は、各地の民族文化の交流を急激に促進し、大きな文化変容をもたらした。同時に国家における民族のあり方にも多大な変化をもたらし、世界レベルでのグローバリズムの進展が浮き彫りにされた。
【シンポジウム】
  • 1991.09.26-09.27 「二〇世紀とはなにか(プレシンポジウム)」(代表者:端信行)
  • 1992.10.21-10.23 「二〇世紀の音」(代表者:櫻井哲男)
  • 1993.10.13-10.15 「映像文化」(代表者:大森康宏)
  • 1994.10.13-10.15 「観光の二〇世紀」(代表者:石森秀三)
  • 1995.11.09-11.11 「文化と生産」(代表者:田村克己)
  • 1996.11.07-11.09 「共同体の二〇世紀」(代表者:中牧弘允)
  • 1997.11.19-11.21 「ことばの二〇世紀 -象徴としてのことば商品としてのことば-」(代表者:庄司博史)
  • 1998.11.04-11.06 「宗教と文明化の二〇世紀」(代表者:杉本良男)
  • 1999.11.04-11.06 「日用品の二〇世紀」(代表者:近藤雅樹)
  • 2000.10.31-11.02 「二○世紀が創りだした"民族"」(代表者:端信行)
【刊行物】
『二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容』シリーズ ドメス出版
  • 『二〇世紀の音 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容1』 櫻井哲男
    A5判/352頁/6,000円/ISBN 4-8107-0406-8/95.07発行
  • 『映像文化 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容2』 大森康宏編
    A5判/276頁/6,000円/ISBN 4-8107-0519-6/00.10発行
  • 『観光の二〇世紀 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容3』 石森秀三編
    A5判/322頁/6,000円/ISBN 4-8107-0450-5/96.12発行
  • 『文化の生産 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容4』 田村克己編
    A5判/348頁/6,000円/ISBN 4-8107-0492-0/99.01発行
  • 『共同体の二〇世紀 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容5』 中牧弘允編
    A5判/360頁/6,000円/ISBN 4-8107-0472-6/98.03発行
  • 『ことばの二〇世紀 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容6』 庄司博史編
    A5判/324頁/6,000円/ISBN 4-8107-0498-X/99.03発行
  • 『宗教と文明化 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容7』 杉本良男編
    A5判/364頁/6,000円/ISBN 4-8107-0569-2/02.03発行
  • 『日用品の二〇世紀 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容8』 近藤雅樹編
    A5判/332頁/6,000円/ISBN 4-8107-0595-1/03.03発行
  • 『民族の二〇世紀 二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容9』 端信行編
    A5判/344頁/6,000円/ISBN4-8107-0613-3 04.03発行

アジア・太平洋における民族文化の比較研究(1988-1997)

趣旨
この特別研究は、1978~1987年度特別研究「日本民族文化の源流の比較研究」の新しい展開として、開始されました。さきの特別研究が、日本を中心とした視点から民族文化の系譜を追求したのに対して、この特別研究は日本に隣接するアジア・太平洋地域の諸民族文化をより広い視点から比較研究することを通じ、日本民族の基層文化とその位置づけについて新たなる方向で資料の蓄積と分析を試みようとするものである。
成果
【シンポジウム】
  • 1989.03.27-03.28 「王権の位相(プレシンポジウム)」(代表者:松原正毅)
  • 1990.03.20-03.24 「王権の位相」(代表者:松原正毅)
  • 1991.01.14-01.17 「海人の世界」(代表者:秋道智彌)
  • 1991.11.18-11.21 「生活文化の展開」(代表者:吉田集而
  • 1992.11.24-11.27 「再生する宗教」(代表者:田邊繁治)
  • 1993.11.22-11.26 「洗練と粗野 -社会関係を律する価値観-」(代表者:清水昭俊)
  • 1994.11.21-11.24 「マンダラと自己 -インド的宇宙論-」(代表者:立川武蔵)
  • 1995.10.30-11.02 「時間とことば」(代表者:長野泰彦)
  • 1996.10.28-10.31 「土地所有の政治史」(代表者:杉島敬志)
  • 1997.10.27-10.30 「儀礼と口頭伝承」(代表者:江口一久)
【刊行物】
  • 『王権の位相』松原正毅編 弘文堂, 1991
    ISBN:433556080X
  • 『洗練と粗野:社会を律する価値』清水昭俊編 東京大学出版会, 1995
    ISBN:4130501283
  • 『土地所有の政治史:人類学的視点』杉島敬志編 風響社, 1999.2
    ISBN:4938718375
  • 『アジアにおける宗教の再生:宗教的経験のポリティクス』田辺繁治編著 京都大学学術出版会, 1995.5
    ISBN:4876980195
  • 『生活技術の人類学:国立民族学博物館シンポジウムの記録』吉田集而編 平凡社, 1995.7
    ISBN:4582481159
  • 『海人の世界』秋道智彌編著 同文舘出版, 1998.3
    ISBN:449586291X
  • 『時間・ことば・認識』長野泰彦編 ひつじ書房, 1999.11
    ISBN:4894761165/4894761173

現代日本文化の伝統と変容の研究(1981-1990)

趣旨
日本の社会・文化、生活様式の全体は明治・大正期、昭和の初期を経て第二次大戦の戦乱を経験し、戦後の混乱期から60年代、70年代という時代を通過して現代にいたるまでの間、多くの変化を遂げてきた。最も顕著にあらわれているのは衣食住の分野であるが、こうした物質文化の面における変化の背後にはこれと結びついて社会構造、人間関係の局面における変化と、更には精神生活の面における変化とが存在している。本研究はこうした現状を包括的に把え、記録し分析することによって、我が国が近い過去においてどう変化してきたかを究明しようとするもので、更にこのことによって我が国の将来への文化の展望の針路を見きわめようとするものである。
成果
【シンポジウム】
  • 1982.02.27    「研究総括会議」(代表者:祖父江孝男)
  • 1983.02.08-02.10 「暮らしの美意識」(代表者:杉田繁治)
  • 1984.02.08-02.10 「日本人の人生設計」(代表者:端信行)
  • 1985.02.20-02.22 「日本人の人間関係」(代表者:栗田靖之)
  • 1986.01.22-01.24 「都市のフォークロア」(代表者:井上忠司)
  • 1987.02.18-02.20 「現代日本の"神話"」(代表者:中牧弘允)
  • 1987.12.22-12.24 「日本人と遊び」(代表者:守屋毅)
  • 1988.12.21-12.23 「日本人にとっての外国」(代表者:小山修三)
  • 1989.12.20-12.22 「情報と日本人」(代表者:野村雅一)
  • 1990.12.18-12.21 「昭和史 世相篇」(代表者:石毛直道)
【刊行物】
『現代日本文化における伝統と変容』シリーズ ドメス出版
  • 『暮らしの美意識 現代日本文化における伝統と変容1』祖父江孝男・杉田繁治編
    A5判/410頁/5,300円/ISBN 4-8107-0183-2/84.06発行
  • 『日本人の人生設計 現代日本文化における伝統と変容2』端信行編
    A5判/356頁/5,300円/ISBN 4-8107-0240-5/86.08発行
  • 『日本人の人間関係 現代日本文化における伝統と変容3』栗田靖之編
    A5判/324頁/5,300円/ISBN 4-8107-0255-3/87.09発行
  • 『都市のフォークロア 現代日本文化における伝統と変容4』井上忠司編
    A5判/324頁/5,300円/ISBN 4-8107-0266-9/88.04発行
  • 『現代日本の“神話” 現代日本文化における伝統と変容5』中牧弘允編
    A5判/304頁/4,800円/ISBN 4-8107-0284-7/89.06発行
  • 『日本人と遊び 現代日本文化における伝統と変容6』守屋毅編
    A5判/346頁/5,300円/ISBN 4-8107-0288-X/89.12発行
  • 『日本人にとっての外国 現代日本文化における伝統と変容7』小川修三編
    A5判/320頁/5,300円/ISBN 4-8107-0320-7/91.07発行
  • 『情報と日本人 現代日本文化における伝統と変容8』野村雅一編
    A5判/334頁/5,300円/ISBN 4-8107-0431-X/92.08発行
  • 『昭和の世相史 現代日本文化における伝統と変容9 』石毛直道編
    A5判/448頁/7,200円/ISBN 4-8107-0358-4/93.03発行

日本民族文化の源流の比較研究(1978-1987)

趣旨
日本民族を特色づける文化がどのように起源し、どのようにして日本に伝えられたかは、わが国の民族学(文化人類学)の重要な課題である。この研究をすすめるために、日本文化と日本人に関する調査に加えて、日本文化の形成に関連があると考えられる周辺諸地域の諸民族について考察することが必要である。
成果
【シンポジウム】
  • 1980.01.28-01.31 「農耕文化」(代表者:佐々木高明)
  • 1981.01.28-01.31 「シャマニズム」(代表者:加藤九祚)
  • 1982.01.20-01.23 「音楽と芸能」(代表者:藤井知昭)
  • 1983.01.19-01.22 「すまい」(代表者:杉本尚次)
  • 1984.01.25-01.28 「社会組織 -イエ・ムラ・ウジ-」(代表者:竹村卓二)
  • 1985.03.13-03.16 「民間伝承」(代表者:君島久子)
  • 1986.02.05-02.08 「狩りと漁撈」(代表者:小山修三)
  • 1987.01.20-01.23 「日本語の形成」(代表者:崎山理)
  • 1988.01.19-01.22 「日本文化源流論の仮題と展望」(代表者:佐々木高明)
【刊行物】
  • 『日本農耕文化の源流―日本文化の原像を求めて』佐々木高明編 日本放送出版協会, 1983
    ISBN:4-1400-9085-5
  • 『日本のシャマニズムとその周辺―日本文化の原像を求めて2 』加藤九祚編 日本放送出版協会, 1984
    ISBN: 4-1400-9090-1
  • 『日本音楽と芸能の源流―日本文化の原像を求めて3 』藤井知昭編 日本放送出版協会, 1985
    ISBN:4-1400-9107-X
  • 『日本の住まいの源流―日本基層文化の探究』杉本尚次編 日本放送出版協会, 1984
    ISBN:4-5795-0015-6
  • 『日本民俗社会の形成と発展―イエ・ムラ・ウジの源流を探る』竹村卓二編 山川出版社, 1986
    ISBN:4-6346-1300-X
  • 『日本民間伝承の源流―日本基層文化の探究』君島久子編 小学館, 1989
    ISBN:4-0939-0081-7
  • 『狩猟と漁猟―日本文化の源流をさぐる』小山修三編 雄山閣, 1992
    ISBN:4-6390-1091-5
  • 『日本語の形成』崎山理編 三省堂, 1990
    ISBN:4-3853-5314-X
  • 『日本文化の源流―北からの道・南からの道』佐々木高明編 小学館, 1991
    ISBN:4-0939-0082-5

日本社会における贈答の数量統計的研究(1978-1980)

人に物を贈ったり、その返礼をするという贈答の習俗は、一方では虚礼のようにいわれながら、日本では、なお根強く残っている。人と人との社会的見解を贈答の面から研究したものはあまり多くない。この研究は日本の社会組織研究上、重要な効果をもたらす研究といえる。