国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「朝鮮半島の文化」に関するフォーラム型情報ミュージアムの基盤構築

研究期間:2014.6-2016.3 / 強化型プロジェクト(2年以内) 代表者 朝倉敏夫

研究プロジェクト一覧

プロジェクトの目的

「朝鮮半島の文化」に関する本館資料の全体的なデータベースを作成するために、常設展示が開設された1983年当時の資料収集についての実態を調査するとともに、その資料の再整理を行なう。
また、本館と韓国国立民俗博物館(以下、韓国民博)との学術交流締結により開催された特別展・企画展について、その成果をもとに、どのような情報生成型のマルチメディア・データベースを作成することができるか両館において共同研究を行なう。
あわせて2015年に両館で共同開催する特別展「日韓食文化」をはじめ、両館において今後どのような協力体制を構築していけるかを協議していく。

プロジェクトの内容

本館「朝鮮半島の文化」に関する展示は、1983年に常設展を設置し、その後2000年、2014年にリニューアルを行うとともに、2002年に特別展「ソウルスタイル」を開催した。そして「朝鮮半島の文化」に関する資料は、ほぼこれら展示に際して収集されたものである。本プロジェクトのリーダーである朝倉は、1988年から本館に勤務しており、それ以後の収集資料については把握しているが、1983年当時の資料収集については不明なことが多い。今回、新たにフォーラム型情報ミュージアムを構築するにあたって、1983年当時の資料収集について、あらためてその実態を把握するとともに、当時収集された資料についての同定を行うことで、「朝鮮半島の文化」に関する本館の資料全体のデータベースを作成することを目的とする。幸い当時の収集に携わった辛琸根温陽民俗博物館顧問に協力を依頼することができると考える。
また、本館は韓国民博と学術協定を締結しているが、これまで両館が協力して2002年に本館において特別展「ソウルスタイル」、韓国民博において特別展「近い隣の国 日本」、2011年に蔚山博物館において「蔚山コレクション」、2013年に本館において企画展「アリラン」を開催してきた。また、2010年度から「映像プロジェクト」を立ち上げ、本館のビデオテーク番組も作成している。これら両館であげた成果をもとに、どのような情報生成型のマルチメディア・データベースを作成することができるか両館において共同研究を行なう。
あわせて両館において2015年には特別展「日韓食文化(仮称)」の共同開催を予定している。この展示の準備期間である2014年7月から1年間、本館外国人客員研究者として韓国民博においてデータベース作成に関わってきた金昌鎬を招へいすることになっており、この展示をもとにした情報生成型のマルチメディア・データベースの作成について議論できるとともに、今後さらに新しい協力体制を構築していけるか協議していくことができると考える。
朝倉は2年間の提案プロジェクト実施期間の終了時に本館を定年退職するが、それまでに本プロジェクトの基盤を構築し、以降は次世代の研究者に託していきたい。

期待される成果
  • 「朝鮮半島の文化」に関する本館資料の全体的データベースの基礎資料の整備
  • 本館と韓国民博とのデータベースの相互活用
  • 本館と韓国民博を基盤としたデータベースの世界発信
2015年度成果
  1. 最終年度の研究実施状況
    「朝鮮半島の文化」に関する本館資料の全体的データベースの基礎資料の整備
    ・本館と韓国民博と「食」関連資料のデータベースの相互活用
    ・本館と韓国民博を基盤としたデータベースの世界発信
  2. 研究成果の概要
    民博の資料:1988年以前に収集した資料 2726点
    (1) 民博の既存のデータ
    (2) (1) を辛琸根によるデータ・チェック、韓国語での補足説明
    (3) (2) を日本語に翻訳(高正子他 )

    このうち、「食」関連の資料 557点
    (4) 英語に翻訳(玄企画)
    (5) 書き込み:韓国語で3人(金セッピョル・金月徳・李徳雨) 2016年3月に完成

    韓国民博の資料:『韓民族歴史文化図鑑 食生活』387点
    (1) 韓国語版の英訳(韓国民博)
    (2) 韓国語版の日本語訳(権允義)

    特別展「韓日食博」での公開(丸川雄三)
    国立民族学博物館資料 459点
    分類:甕、壷、籠、箱、膳、盆、食器、調理器、祭礼器、農具
    韓国国立民俗博物館資料 384点
    分類:食器、食膳、調理器、貯蔵・運搬具、加工具
  3. 研究成果・データベース公開計画及び今後の展開等
    「韓国食文化データベース」の公開
    特別展「韓日食博」において展示公開した標本資料とその関連情報をウェブサイトで発信
    平成28年度の前半に館内及び関係者に公開し、内容等調整のうえ一般公開
2014年度成果
  1. 今年度の研究実施状況
    本館「朝鮮半島の文化」に関する本館の資料のうち、1988年以前に収集した約2700点について当時の収集に携わった辛琸根温陽博物館顧問に協力を依頼し、データベースの基礎となるコンテンツを作成する作業を推進した。
    また、本館は韓国民博と学術協定を締結しているが、これまで両館が協力してあげた成果をもとに、どのような情報生成型のマルチメディア・データベースを作成することができるか両館において協議した。
    2014年7月から1年間、本館外国人客員研究者として韓国民博においてデータベース作成に関わってきた金昌鎬を招へいし、2015年に開催する特別展「韓日食博」において公開する情報生成型のマルチメディア・データベースの作成について議論し、大阪工業大学の佐野教授とも共同で「食」関連資料のデータベースの作成に着手した。
  2. 研究成果の概要(研究目的の達成)
    1988年以前に収集した本館「朝鮮半島の文化」に関する資料約2700点について、データの補充およびクリーニングを行った。そのうち「食」に関する資料約500点のデータについて韓国語、日本語版を作成した。
    韓国国立民俗博物館の『韓民族歴史文化図鑑―食生活』に掲載された120種の資料についての記載事項について韓国語、日本語、英語版を作成した。
  3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)
    特になし。