国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本の文化人類学教育における「知」の再検討

共同研究 代表者 岡田浩樹

研究プロジェクト一覧

目的

本研究課題の目的は、日本社会における人類学的「知」の現状と問題点を検討するために、教養課程での人類学教育、概説書など主に大学や一般社会に向けられた人類学教育、普及の歴史、現状、問題点を検討することである。さらに、これと関連した日本人類学者のよる民族誌資料の教育・普及への利用などの問題に即しても検討を試みる。そしてその成果から得られる知見を、人類学関連講義の授業改善に利用可能な基礎資料集としてまとめ、教育のためのデジタルデータベースシステムの検討、現状分析への有効な視点や問題点を検討し、今後のあるべき方向性を探ることにある。

研究成果

本研究会は、従来の研究会におけるゲストスピーカー、班員の発表とそれに引き続く議論という形式だけでなく、班員の共同作業と作業に関する継続的な検討をともなう。また広く外部に研究過程やデータを公開し、議論に参加してもらうためのコンテンツ作成を検討し、作成した。人類学関連講義の授業改善に利用可能な基礎資料集としてまとめ、教育のためのデジタルデータベースシステムの検討を行い、その成果は岡田浩樹監修、川村清志他 2007『戦後日本の人類学テキストにおける重要語彙の頻出状況についての検証とデータベース化の諸問題』(平成17年度公益信託民族学振興基金渋澤民族学振興プロジェクト)に一部をまとめている。そこで得られたデータ、方向性や視点についての検討を行った。この成果については、いずれ国立民族学博物館研究報告に論文として提出する予定である。

第二に、本共同研究会では、戦後の日本の人類学教育を担ってきた先達を特別講師として招聘し、話題提供をしていただくと同時に議論を行うことで、日本の人類学教育の現場についての歴史的証言を残し、合わせて今後の課題を検討する事を目的としていたが、共同研究員の異動、公務との関係などにより十分な回数を行うことができず、数名の方インタビューにとどまった。

2006年度

まず、共同研究会という形式を考慮し、戦後の人類学教育に深く関わってきた先達の人類学者をゲストスピーカー(2名を予定)直接指導を受けた、あるいは研究上の関係が深い人類学者をコメンテーターとして招き、日本社会における人類学的「知」の受容に関して共同研究員による討議をおこなう。なお、ゲストスピーカーおよびコメンテーターの発表および討議は資料として記録、保存する。加えて、共同研究会班員による戦後日本における人類学教育の経緯、およびこの社会的、文化的背景についての報告、検討をおこなう。これに関しては平成17年度澁澤民族学研究助成の助成による戦後人類学テキストの分析成果の検討を行う。加えて、比較検討のために、韓国文化人類学会において人類学教育の中心的役割を担う中堅(ハンギョング教授:1年間北海道大学に在外研究で滞在)を招き、日韓の戦後における人類学的研究について比較検討を行う。

【館内研究員】 飯田卓
【館外研究員】 梅屋潔、大西秀行、川橋範子、川村清志、菊池暁、桑山敬己、佐藤知久、田中雅一、中村淳、真鍋昌賢
研究成果

平成18年度は、研究代表者および研究分担者の異動、公務などの事情のために、共同研究会開催の日程調整が非常に困難な状況にあり、講師を招聘する形での民博での共同研究会を開かくことができなかった。このため、メーリングリストを利用した議論、非公式の打ち合わせ会議を行う程度にとどまった。(上記の事情により、)共同研究会に特別講師を招聘し、これについての議論を行うことができなかったため、本共同研究のもう一つの柱である戦後日本の人類学テキストの分析を進め、これについての議論を行った。平成17年度公益渋澤民族学振興基金の支援を受け作成した「戦後日本の人類学テキストにおける重要語彙の頻出状況についての検証とデーターベース化の諸問題」は、本共同研究会でデータ化した資料の一部の報告にとどまっていたので、他のデータを含め、検討し、今後のデータ化をめぐる諸問題の検討と、方向性、またデータ分析によって得られる成果についての検討を行った。

2005年度

【館内研究員】 飯田卓
【館外研究員】 梅屋潔、川橋範子、川村清志、菊池暁、桑山敬己、佐藤知久、中村淳、真鍋昌賢
研究会
2005年9月17日(土)13:30~ / 18日(日)13:30~(第1演習室)
吉田禎吾「日本の文化人類学教育における「知」の再検討」
浜本満「コメント」
研究成果

本年度は研究代表者の本務校事情(大学院改組)により、民博での共同研究会の開催は1回にとどまった。ただし、これと平行し、メーリングリストを利用した打ち合わせを継続して行うと同時に、本研究会と連動したプロジェクト(澁澤民族学振興基金)により、本研究会の基礎的資料となる戦後人類学テキストのデータベース化を進め、報告書を完成させた。そして、このデータベースに蓄積された資料を基に、今後の研究会におけるテーマを検討した。また共同研究会の内容は発表者の承諾を得て、テープ起こしをおこない、これも後日、民博に資料として提出する予定である。

研究成果の概要

共同研究会では、戦後日本の人類学に大きな貢献をした吉田禎吾先生をゲストスピーカーとしてお招きし、またコメンテーターとして浜本満氏をお願いし、戦後日本の人類学の展開と日本社会における人類学的知の受容の問題について、多角的な議論を行った。この内容はテープ起こしを進めており、ゲストスピーカーの校正チェックの上、紙媒体、CD記録として民博に寄贈する予定である。またこれと平行しておこなった戦後日本の人類学テキストのデータベース化作業については、報告書を完成させた。

共同研究会に関連した公表実績

平成17年度公益信託澁澤民族学振興基金研究助成報告書『戦後日本の人類学テキストにおける重要語彙の頻出状況についての検証とデータベース化の諸問題』(研究代表者:岡田浩樹)

2004年度

【館内研究員】 杉本良男
【館外研究員】 梅屋潔、川橋範子、川村清志、菊池暁、桑山敬己、佐藤知久、中村淳、真鍋昌賢
研究会
2005年3月20日(日)13:30~ / 21日(月)10:00~(大演習室)
「来年度計画と研究の方向性についての検討」
2005年3月26日(土)13:30~(第2演習室)
岡田浩樹「戦後人類学教育の試み」
「教科書のデータ分析による日本の人類学の「知」」
「来年度の具体的計画策定」
研究成果

本年度の第一の成果は、共同研究会の議論と成果を同時進行的にWEB公開するためのコンテンツ作成、実施したことにある。本研究会は、従来の研究会におけるゲストスピーカー、班員の発表とそれに引き続く議論という形式だけでなく、班員の共同作業と作業に関する継続的な検討をともなう。また広く外部に研究過程やデータを公開し、議論に参加してもらうためのコンテンツ作成を検討し、作成した。このような試みは国内の共同研究会では未だ例が少なく、実験的な意義が高いと思われる。

第二に、2回の共同研究会で行われた議論であり、そこでは前身となる研究会の成果を批判的に検討し、今後の研究会の方向性を明らかにし、各班員の具体的作業、個別研究テーマを確定した。