国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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ジャワ更紗を基軸としたテキスタイルのグローバル化に関する人類学的研究

共同研究 代表者 吉本忍

研究プロジェクト一覧

目的

本共同研究は、インドネシアのジャワ島を中心としてつくられてきたジャワ更紗のデザインと技術が、世界の広範な地域に展開してきたというグローバル化の実態を人類学的な研究の枠組みを基軸とした研究によってあきらかにすることをおもな目的としている。

ジャワ更紗のデザインと技術(ロウケツ染め技術)のグローバル化のうちデザインについては、産業革命以降にイギリスをはじめとするヨーロッパ諸国、さらにはインドや日本が生産してきたプリント・テキスタイルのプリント・デザインとして取り込まれ、それらは近・現代の熱帯アフリカにおける日常的なファッションとして定着している。そして、今日においてはそれらのプリント・テキスタイルの生産はアフリカでもおこなわれるようになっており、そのほかにインドネシア、タイ、中国などにおいてもジャワ更紗のデザインを取り込んだアフリカ向けおよび東南アジア向けのテキスタイル・プリントが生産されている。一方、ジャワ更紗のロウケツ染め技術は、オーストラリアのアボリジニやカリブ海諸国の観光工芸の製作技術に展開している。そしてさらに、わが国のキモノのうちにもジャワ更紗のデザインや製作技術を取り込んだものがつくられている。

研究成果

ジャワ更紗は、インドネシアのジャワ島を中心として製作されてきたロウケツ染めの布として世界的に有名である。しかし、その技術とデザインのグローバル化については、これまでほとんど知られていなかった。本共同研究では、そうしたジャワ更紗のデザインと技術が、産業革命以降、現代に至るまでのあいだに世界の広範な地域に展開してきたというグローバル化の実態をかなり解明することができた。とりわけ、ジャワ更紗の技術とデザインのグローバル化は、その多くがジャワ更紗の技術のみ、あるいはデザインのみのグローバル化として捉えられるが、アフリカに展開したプリント更紗(アフリカン・プリント)や東南アジア大陸部のシンガポール、マレーシア、ミャンマーなどで生産されてきたプリント更紗のうちには、ジャワ更紗のロウケツ染めの技術とデザインが一体となったグローバル化の産物として位置づけられるものが存在していることがあきらかとなった。

以上のような本共同研究の成果は、本年度9月から12月にかけて開催した本館の特別展「更紗今昔物語-ジャワから世界へ-」で展示公開した。また、同特別展図録『更紗今昔物語-ジャワから世界へ-』は、本共同研究の成果刊行物として位置づけられるものでもある。

2006年度

本共同研究は平成18年度に本館で開催を計画している特別展と連携した研究である。したがって、本年度の共同研究は昨年度に引き続き,実質的に特別展の開催に向けた準備作業として位置づけ、メンバーの個々の研究発表と全員での討論によって、これまでに蓄積されてきた個々の研究者の知識や情報の共有化をはかりながら、近・現代におけるジャワ更紗のグローバル化の実態解明に向けて共同研究を実施する。具体的な研究の実施計画としては、下記の項目をはじめとする研究発表と討論をおこなう予定である。

  • ジャワ更紗の伝統と変容
  • ジャワ更紗とプリント・テキスタイルのグローバル化
  • アフリカン・プリント・テキスタイルの地域差
  • プリント・テキスタイルに関するインドと東アフリカの歴史的、経済的関係
  • アボリジニの観光工芸におけるロウケツ染めの技術とデザイン
  • カリブ海諸国の観光工芸におけるロウケツ染めの技術とデザイン
  • 東南アジアにおけるイミテーション・バティックの歴史的展開
  • 日本におけるアフリカ向けプリント・テキスタイルの生産とロウケツ染め技術
  • ヨーロッパの捺染技術史
  • インド製のアフリカン・プリント
【館内研究員】 樫永真佐夫、三島禎子
【館外研究員】 池本幸生、内海涼子、江口信清、大野木啓人、織本知英子、上岡学正、金谷美和、小山修三、杉本星子、関本照夫、西本陽一、深沢克己
研究会
2006年9月6日(水)10:00~ / 7日(木)10:00~(第2演習室)
「ジャワ更紗資料の研究に関する総合討論」
2006年12月2日(土)13:00~(第4セミナー室) / 3日(日)10:00~(第4セミナー室)
吉本忍、内海涼子、他4名
研究フォーラム「国際シンポジウム ジャワ更紗とプリント更紗:デザインと技術のグローバル化」
2006年12月4日(月)10:00~(栗山工房:京都市右京区)
吉本忍、内海涼子、他4名
研究成果

ジャワ更紗は、インドネシアのジャワ島を中心として製作されてきたロウケツ染めの布として世界的に有名である。しかし、その技術とデザインのグローバル化については、これまでほとんど知られていなかった。本共同研究では、そうしたジャワ更紗のデザインと技術が、産業革命以降、現代に至るまでのあいだに世界の広範な地域に展開してきたというグローバル化の実態をかなり解明することができた。とりわけ、ジャワ更紗の技術とデザインのグローバル化は、その多くがジャワ更紗の技術のみ、あるいはデザインのみのグローバル化として捉えられるが、アフリカに展開したプリント更紗(アフリカン・プリント)や東南アジア大陸部のシンガポール、マレーシア、ミャンマーなどで生産されてきたプリント更紗のうちには、ジャワ更紗のロウケツ染めの技術とデザインが一体となったグローバル化の産物として位置づけられるものが存在していることがあきらかとなった。

以上のような本共同研究の成果は、本年度9月から12月にかけて開催した本館の特別展「更紗今昔物語-ジャワから世界へ-」で展示公開した。また、同特別展図録『更紗今昔物語-ジャワから世界へ-』は、本共同研究の成果刊行物として位置づけられるものでもある。

2005年度

【館内研究員】 石森秀三、樫永真佐夫、三島禎子
【館外研究員】 池本幸生、内海涼子、江口信清、大野木啓人、織本知英子、小山修三、杉本星子、関本照夫
研究会
2005年10月1日(土)13:00~ / 2日(日)10:00~(第1演習室)
全員「共同研究の趣旨と来年度の特別展について」
2006年1月21日(土)13:00~ / 22日(日)10:00~(第2演習室)
吉本忍他「アフリカ・ヨーロッパのプリント・テキスタイルについて」
2006年3月25日(土)13:00~ / 26日(日)10:00~(第1演習室)
全員「ジャワ更紗とプリント更紗、およびそれらの技術などに関する分担テーマの成果報告」
研究実施状況

本年度は平成17年10月以降に3回の共同研究会を民博で開催し、共同研究員全員とその他の参加者による個別の発表を核として、共同研究会の目的に沿った研究討論をおこなった。また、研究代表者の吉本をはじめとする一部のメンバーは、国内外でそれぞれが担当する研究テーマに即した調査をおこなった。

研究成果の概要

共同研究会発足当時は、参加者全員がジャワ更紗のグローバル化についてはきわめて断片的な情報しか持ちえていなかったが、共同研究会の開催と共同研究員個々の調査・研究の進展にともない、あらたに相互の情報を交換し、それらを共有することによって、その全貌が次第にあきらかになってきた。本年度はその研究成果の一端を9月7日から12月5日にかけて開催する特別展『更紗今昔物語‐ジャワから世界へ‐』において公開する予定となっており、共同研究員は展覧会図録の執筆を開始している。また、特別展の会場の展示構成については吉本と大野木が中心となって計画を策定中である。

共同研究会に関連した公表実績

平成17年度中には特別展の予報として、吉本忍が雑誌『月刊 染織α』に連載中のシリーズ「縦横無尽 タテとヨコ・色とかたちのフィールドワーク」の26回目(2006年1月号)に「アフリカ便り1 カメルーンにて」を、また、27回目(2006年4月号)に「アフリカ便り2 ナイロビにて」を執筆した。