国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

人類学における韓国研究の再検討-日韓の新しい研究協力関係の構築

共同研究 代表者 朝倉敏夫

研究プロジェクト一覧

目的

本研究の目的は、日韓相互の社会・文化を研究対象としている日本人類学者と韓国人類学者が共同で、韓国社会に関する新たな人類学的研究の課題と方法論、可能性を見いだすことにある。そして、21世紀を迎え、社会・文化が大きな変貌を示しつつある韓国社会に関し、従来の人類学的韓国研究を再検討し、その新たな可能性と方向性を探ることにある。より広い目的は、日韓の人類学者による共同研究によって、人類学に置いて今日的課題となっている研究主体と研究対象という二分的枠組みの問題を乗り超え、相互の研究を検証し、共通の社会文化理解を作り出すアプローチの検討である。そして、本研究では従来の人類学的視野では収めきれない現象が起きている今日の韓国社会に対し、日韓の研究者が共同で議論し、今後の東アジア社会における文化人類学的研究の新しい方向性を探ろうとするものである。

研究成果

共同研究会では外国人客員教授(文玉杓、劉明基)や外来研究員(李圭山)として本館に来られた韓国人類学者をはじめ、日本に滞在中もしくは日本で調査中の韓国人人類学者(全京秀、徐榮振、愈起濬、具知瑛、李榮眞、朴志煥)をゲストスピーカーとして招き、テーマを設定した上で発表していただいた。また、発表者以外にも本館客員教員の韓福眞、崔仁宅、外来研究員の高琴姫、安美貞、およびソウル大学人類学科の金光憶教授、済州観光大学の朴商洙教授をはじめとする韓国人研究者および国内の韓国研究者がオブザーバーとして多数参加した。共同研究参加者はそれぞれの専門領域から、研究会で取り扱われたテーマに関して韓国語で議論をおこなった。

平成19年1月19日には、大阪・神戸の在日韓国・朝鮮人調査のため来日した「20世紀民衆生活史研究団」と、平成19年7月11日には、交流協定のため来館した韓国国立民俗博物館館長および館員と、意見交換を行った。また、最終年度は、韓国文化人類学会創立50周年記念大会に参加、日本学術振興会二国間交流事業共同研究会を開催するなど、日韓の人類学研究者間の相互協力関係を幅広く構築した。

日韓の人類学研究者は韓国社会研究において歴史的にも緊密な協力関係があり、しかも近年では韓国人研究者の日本研究も本格化し、日本に研究調査する韓国人人類学者の数も増加している。このような状況を踏まえ、互いの社会・文化に対し、いかなる人類学的アプローチが可能かを日本、韓国の人類学者が対話、協力して検討したが、このことは人類学的相互理解、双方向的アプローチの可能性を検討する上でも意義があると考える。

2008年度

研究成果取りまとめのため延長(1年間)

【館内研究員】 太田心平、崔仁宅
【館外研究員】 李善愛、伊藤亜人、岡田浩樹、高正子、嶋陸奥彦、林史樹、本田洋
研究会
2008年5月18日(日)14:00~17:00(国立民族学博物館第4演習室)
人類学における韓国研究の再検討ー日韓の新しい研究協力関係の構築
「韓国文化人類学会国際学術大会への参加について」
2008年8月25日(月)13:30~17:30(国立民族学博物館第3演習室)
全員:成果公開のためのワーキング
2009年2月28日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
2009年3月1日(日)10:00~13:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
国立民族学博物館共同研究「日本人類学における韓国研究の再検討
――日韓の新しい研究協力関係の構築」および日本学術振興会二国間交流事業による国際セミナー
研究成果

韓国文化人類学会の国際学術大会では、「日本人類学界での韓国研究」という分科会で、朝倉が「総合研究大学院大学の研究事例から見た日本人類学の韓国研究」と題し概況を提示し、岡田浩樹が「人類学と地域研究の枠から」、李善愛が「東アジア沿海地域の海洋資源に関する生態人類学的研究」、林史樹が「移動という観点」、高正子が「日本での韓国仮面劇研究の周辺」、小谷幸子が「境界領域の人類学の観点から見た韓国――サンフランシスコのジャパンタウンの関係性分析」をそれぞれ発表し、太田心平が「最近の日本での韓国を『人類学すること』とは」と題し総括した。

これらの発表に対し、本田洋と劉明基からのコメントがあり、フロアーからの質問を受けた。本分科会には、韓国人類学会の元老をはじめ、多くの韓国人研究者が聴衆として参加してくれた。

2007年度

今年度は、国立民族学博物館において4-5回程度の共同研究会を開催する。

共同研究会には外国人客員教授と外来研究員として本館に来られる韓国人類学者をはじめ、日本に滞在中もしくは日本で調査中の韓国人人類学者をゲストスピーカーとして招き、テーマを設定した上で発表していただく。また、研究会参加者は日本人人類学者の立場から、ゲストスピーカーの発表内容に応じた研究上の課題について、議論の材料を提供するための報告をおこなう。加えて、ゲストスピーカーの研究テーマに近い、日韓の人類学者をコメンテーターとして招くことで、発表内容の理解を深める。

日本国内の学会での発表に加えて、本研究課題の成果は、韓国における人類学関連の学会での発表も計画している。また、外部資金等の手当がつけば、国際ワークショップあるいはシンポジウムにおいて研究報告会を開催する。

【館内研究員】 太田心平、韓福眞、劉明基
【館外研究員】 李善愛、伊藤亜人、岡田浩樹、高琴姫、高正子、嶋陸奥彦、林史樹、本田洋、渡邊欣雄
研究会
2007年5月26日(土)13:30~19:30(国立民族学博物館 大演習室)
徐栄振「言論人が見た韓日学術研究(仮題)」、兪起濬「日韓祝祭文化の比較研究」
2007年7月11日(水)15:00~17:00(国立民族学博物館 第3演習室)
韓国国立民俗博物館館長との意見交換
2007年7月21日(土)13:30~19:30(国立民族学博物館 4階大演習室)
太田心平「物語としての韓国現代政治史と当事者たちの解釈過程」
具知瑛「中国青島における韓国人と中国朝鮮族-自営業者に着目して」
2007年10月14日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 第1演習室)
全員「韓国文化人類学会創立50周年大会への参加について」
2007年12月9日(日)13:30~18:30(国立民族学博物館 第4演習室)
「韓国文化人類学会創立50周年大会への参加計画」全員
2008年3月22日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
朴志煥「階級研究はどうあるべきか―韓国と日本の事例をもとに」
李榮眞「現代日本における記憶の政治」
研究成果

共同研究会では主として本館の外来研究員の韓国人研究者と日本に滞在中もしくは調査中の韓国人人類学者に、それぞれの研究について発表していただいた。共同研究参加者はそれぞれの専門領域から発表者のテーマに関して議論をおこなった。

日韓の人類学者は韓国社会研究において歴史的にも緊密な協力関係があり、しかも近年では韓国人研究者の日本研究も本格化し、日本に研究調査する韓国人人類学者の数も増加している。このような状況を踏まえ、互いの社会・文化に対し、いかなる人類学的アプローチが可能かを日本、韓国の人類学者が対話、協力して検討したが、このことは人類学的相互理解、双方向的アプローチの可能性を検討する上でも意義があると考える。

2006年度

平成18年度の秋から平成19年度の末までの共同研究期間中に、国立民族学博物館において6-7回程度の共同研究会を開催する。

共同研究会には外国人客員教授と外来研究員として本館に来られる韓国人類学者をはじめ、日本に滞在中もしくは日本で調査中の韓国人人類学者をゲストスピーカーとして招き、テーマを設定した上で発表していただく。また、研究会参加者は日本人人類学者の立場から、ゲストスピーカーの発表内容に応じた研究上の課題について、議論の材料を提供するための報告をおこなう。加えて、ゲストスピーカーの研究テーマに近い、日韓の人類学者をコメンテーターとして招くことで、発表内容の理解を深める。

共同研究参加者はそれぞれの専門領域から、研究会で取り扱われたテーマに関して議論をおこなう。」その上で、そのテーマが人類学的韓国研究全体の中で、どのような課題が残り、いかなる可能性があるか、そのテーマを発展させた研究課題はなにか、について、ゲストスピーカー、コメンテーターを交えて踏み込んだ議論をおこなう。

【館内研究員】 文玉杓(外国人研究員)、劉明基(外国人研究員)
【館外研究員】 李善愛、李圭山、伊藤亜人、太田心平、岡田浩樹、高琴姫、高正子、嶋陸奥彦、林史樹、本田洋
研究会
2006年10月7日(土)13:30~(大演習室)
朝倉敏夫「研究会の趣旨説明」
全員「各自の研究テーマについて」
2006年12月16日(土)14:00~(大演習室)
劉明基「外国人労働者、国際結婚、そして韓国社会」(仮題)
全員「韓国文化人類学の現況について情報交換」
2007年3月3日(土)14:00~(大演習室)
全京秀「京城人類学派とその周辺」
研究成果

共同研究会では外国人客員教授と外来研究員として本館に来られる韓国人類学者をはじめ、日本に滞在中もしくは日本で調査中の韓国人人類学者をゲストスピーカーとして招き、テーマを設定した上で発表していただいた。共同研究参加者はそれぞれの専門領域から、研究会で取り扱われたテーマに関して議論をおこなった。

日韓の人類学者は韓国社会研究において歴史的にも緊密な協力関係があり、しかも近年では韓国人研究者の日本研究も本格化し、日本に研究調査する韓国人人類学者の数も増加している。このような状況を踏まえ、互いの社会・文化に対し、いかなる人類学的アプローチが可能かを日本、韓国の人類学者が対話、協力して検討したが、このことは人類学的相互理解、双方向的アプローチの可能性を検討する上でも意義があると考える。