国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

人類史における移動概念の再構築――「自由」と「不自由」の相克に注目して

研究期間:2019.10-2022.3 代表者 鈴木英明

研究プロジェクト一覧

キーワード

人類史、移動、自由/不自由

目的

本研究は、人類史における移動概念を、特に「自由」と「不自由」の相克に注目して再検討し、移動研究の新たな地平を築こうとするものである。人が移動する要因には、迫害や紛争、あるいは天災など生存に関わる現象からの「避難」、特定の集団や個人に対する「強制」、自由意志が先立つ「移住」などさまざまな位相がある。このなかで「強制」については、とりわけ移動者の不自由性や被害的側面、悲劇性ばかりが強調され、移動者は主体性のない存在として理解されてきた。これに対して、本研究では、「強制」に含まれる移動現象(たとえば、奴隷貿易、強制移住、契約労働、政治難民)を軸に、時間軸と空間軸との結節点が異なる事例を研究対象として取り上げ、それぞれの事例において、不自由と自由がどのように相克しているのかを検討し、事例間の比較を試みながら、人類史における移動概念について再検討する。具体的には、移動を生じさせた政治的、宗教的、経済的、あるいは文化的、自然環境的な要因を踏まえながら、他方で、移動する人や集団の立場から移動現象を捉えなおす。このようにマクロな視点とミクロな視点とを交錯させ、「自由」と「不自由」の相克に着目しながら、コンテクストの異なる多様な移動を比較・連関させることで、人類史における移動研究の新たな展開に資する概念の再構築を目指す。

2020年度

本年度は、個別事例に関して参加者による報告と議論を行い、ミクロな視点から議論を構築していくことを第一の目標とする。また、第一回研究会では、各参加者の問題関心やアプローチなどに関してお互いに理解を深めることを目的に、合評会を開催する。また、それぞれの回では特定のテーマを設定し、関連する報告を並べることで、時間・空間軸を跨いだ比較・連関の作業を行いやすいようにする。また、適宜、各回を横断する検討の場を設けることによって、ミクロな事例で立ち往生することなく、マクロな視点での議論を並走させることを心掛ける。

【館内研究員】 池谷和信、新免光比呂、寺村裕史、三島禎子
【館外研究員】 小林和夫、左地亮子、薩摩真介、杉本敦、園田節子、田中鉄也、馬場多聞、向正樹
研究会
2020年11月28日(土)12:30~18:30(国立民族学博物館 第4セミナー室 ウェブ会議併用)
鈴木英明(国立民族学博物館)・「アデン湾両岸地域の可能性」
馬場多聞(立命館大学)「14世紀のイエメンの東アフリカ出身者」
石川博樹(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)「エチオピアのオロモの移動:その歴史的意義と研究の困難さ」
池谷和信(国立民族学博物館)「ソマリランドにおける人の移動、ものの移動」
「先住民の宝」展見学
栗本英世(大阪大学)、三島禎子(国立民族学博物館)によるコメントと総合討論

2019年度

本研究会の参加者の専門分野は多岐に亘っているので、共同研究会では、一度にいくつもの発表を詰め込むのではなく、なるべく一回の研究会における報告数を絞り、事例の詳細な報告と議論とを重ねたい。具体的には、各研究会、時間軸、空間軸のバランスに留意しながら3人の報告者を置く。これに、コメンテーターを1人、配置し、報告を比較・連関の観点からつなげるコメントを行い、それを土台にして参加者で議論を行う。 2019年度は、11月ごろに第1回研究会を開催し、共同研究会のテーマの確認と参加者の個別のテーマの紹介とを行いながら、参加者によるテーマと全体像の共有を目標にする。また、1月ごろに第2回研究会を行う。ここでは参加者各自の専門分野における移動概念を確認し、その限界と可能性とについて全員で議論する。

【館内研究員】 池谷和信、新免光比呂、寺村裕史、三島禎子
【館外研究員】 小林和夫、左地亮子、薩摩真介、杉本敦、園田節子、田中鉄也、馬場多聞、向正樹
研究会
2019年12月7日(土)14:00~18:00(国立民族学博物館 第4演習室)
鈴木英明(国立民族学博物館)開会のあいさつ
自己紹介(参加者全員)
鈴木英明(国立民族学博物館)「移動概念の現状と可能性」
総合討論
研究成果

本年度は、2019年12月7日に第一回研究会を行った。その場では、まず、研究代表者から趣旨説明を行い、続いて、ブレインストーミングとして参加者全員による自己紹介を行い、各自の問題関心を確認しあった。その後、再び研究代表者による「移動概念の現状と可能性」と題する報告が行われ、その後、質疑応答を経て、本研究会の問題関心を共有した。