国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

中央アジア地域研究関連希少資料アーカイブの構築とその学術的一般的有効利用に関する研究(2003-2004)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 帯谷知可

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は主に旧ソ連中央アジアおよびロシアに保管され、散逸もしくは著しい劣化の危機にある中央アジア地域研究に関する希少資料をデジタル化し、内容の保存をはかるとともに、従来半ば閉ざされた状況にあったこれら貴重かつ豊かな資料群を中央アジア地域研究に、またこの地域に対する一般の理解促進のために、広く生かす方策を検討するものである。また、中央アジア現地ではロシア語資料への無関心、ロシアでは紛争地域以外の中央アジアへの無関心によって、これらの資料はあまりかえりみられることがなく、本研究には資料自体の内容の保存という意義もある。
具体的には従来日本の中央アジア地域研究ではほとんど有効に利用されてこなかった写真・画像を中心に、ウズベキスタン共和国タシュケント市ならびにロシア連邦サンクトペテルブルグ市において、ロシア帝政期の中央アジア関連の資料を対象として、包括的資料調査の後、それらをデジタル撮影し、整理および資料解題の作成を経て、中央アジア地域研究関連写真・画像資料アーカイヴを構築する。CD化によりその成果を公開する予定である。

活動内容

2004年度活動報告

平成16年度は、平成15年度と同様にロシア連邦サンクトペテルブルグ市およびウズベキスタン共和国タシュケント市において、ロシア帝政期の写真・画像資料を中心に中央アジア地域研究に関連する希少資料に関する調査を行うと同時に、デジタル化につき所蔵先と合意できた資料につき、デジタル複写撮影を行った。本研究の成果として、資料CD6点(うち2点はタシュケントで民間に所蔵される地図資料、うち4点はサンクトペテルブルグのロシア科学アカデミー人類学民族学博物館中央アジア部門所蔵の写真資料を所収したもの)を作成し、研究成果報告書『中央アジア地域研究希少資料アーカイヴの構築とその学術的一般的有効利用に関する研究』(国立民族学博物館、平成17年3月)を刊行した。日本、中央アジア、ロシアをつなぐ中央アジア地域研究希少資料アーカイヴ構築の当面の可能性として、資料の所蔵先と綿密に交渉しながら、閲覧・検索・デモンストレーションを主たる目的とした資料CDを作成・共有し、それを蓄積していくことが有効であり、将来的にはそれをシステム化することが望ましいというのが本研究の結論である。

2003年度活動報告

ロシア連邦サンクトペテルブルグ市およびウズベキスタン共和国タシュケント市において、ロシア帝政期の写真・画像資料を中心に中央アジア地域研究に関連する希少資料に関する調査を中心に研究を進めた。サンクトペテルブルグでは、海外共同研究者Ch.タクサミ教授の仲介により、ロシア科学アカデミー人類学民族学博物館中央アジア部門主任R.ラヒモフ博士と知己を得、本研究におけるより直接的な協力につき検討することができた。同博物館は初代トルキスタン総督カウフマンが制作させた『トルキスタン・アルバム』ほか、当時の写真家や東洋学者による写真コレクションを所蔵していることが明らかとなった。また同市において比較的大規模な写真コレクションを所蔵しているのは考古学研究所写真アーカイヴとロシア地理学協会であることがわかり、これらにおいても写真資料に関する調査に着手し、一部所蔵資料に関する情報を提供してもらった。機関間の横の連携がほとんどなく、所蔵資料に関する情報の共有や資料そのものの共有などの観点から本研究のようなアプローチが有益であることを実感した。タシュケント市では、海外共同研究者E.ルトヴェラゼ教授の協力によりウズベキスタン文化省文化遺産保存部および国立中央アーカイヴ写真映画音声資料フォンドにおいて調査を行った。今年度は、現地調査期間を縮小せざるをえなかったこともあって、現地調査においては資料調査と実験的なデジタル撮影をするにとどまったが、資料情報を整理すると同時に、来年度に向けて本格的なデジタル撮影とアーカイヴ構築の方法につき検討中である。