国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

地域研究に関する学術写真・動画資料情報の統合と高度化(2016-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』 代表者 吉田憲司

研究プロジェクト一覧

目的・内容

日本の研究者による世界各地での現地調査の際に撮影された写真や動画などの画像資料は、世界諸地域の調査当時の実態を記録した貴重な研究資源であるとともに、日本の学術史を反映する学術遺産でもある。本研究支援事業の目的は、地域研究に関わる進行中の科研費プロジェクトで、その研究にとって過去に蓄積された画像資料のデジタル化・共有化が大きな貢献をなすものを技術的に支援し、研究の格段の進展を促すことにある。この事業を通じて、日本の国内外の学術調査に関わる写真・動画資料を集積したデータベース「地域研究画像デジタルライブラリ」を構築し、地域研究のさらなる発展に資するプラットフォームとして整備する。本事業の実施にあたっては、進行中の科研費採択課題実施者を対象に広く公募をおこなう。採択されたプロジェクト(以下、「公募プロジェクト」とよぶ)に対しては、当該公募プロジェクトの所蔵する写真・動画資料をプラットフォームにおいてデジタル化・データベース化し、地域研究に有用な日英の基本情報(テキスト)を付加して返却することで、データの整理と公募プロジェクト内での共有化を進める。こうしたデータをプラットフォームに逐次集積することにより、最終的には地域研究画像資料の国際的共有化をはかることとする。

活動内容

2020年度実施計画

本年度は、公募プロジェクトの募集を令和2年4月1日に開始し、応募の締め切りは令和2年6月5日に設定する。
そして、「地域研究画像デジタルライブラリ」全体を統括するプラットフォーム委員会のもとに置かれる「公募プロジェクト審査委員会」にて審査を行い、採択課題を決定する。審査結果については、令和2年6月末日までに通知する。応募資格者については、研究代表者あるいは研究分担者とし、範囲を拡大した。募集件数は、カテゴリーA[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化とテキスト情報の入力支援を必要とするもの]、カテゴリーB[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化を必要とするが、テキスト情報の入力は申請者自身がおこなうもの]、カテゴリーC[フィルムやガラス乾板などの資料を含まず、すでにデジタル化されている画像のデータベース化だけを必要とするもの]という3つのカテゴリーを設け、年間で合計15件程度を採択する予定である。
採択された公募プロジェクトに対しては、まず関係者を対象としたワークショップを実施し、資料の取り扱い、デジタル化、ドキュメンテーションに関する研修をおこなう。その際に「プラットフォームが資料の整理(必要に応じてクリーニングや修復)、デジタル化(デジタル複製)、データベース化(送信可能化)をおこなうこと」への同意を書面にて確認する。その後、プラットフォーム技術支援者が写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)の所在地に赴いて資料の保存状態を確認し、資料を中核機関である国立民族学博物館(以下、「民博」という)に輸送するか、輸送せずに現地でデジタル化するかを判断する。そのうえで、民博もしくは現地において通し番号(ID)を付与するなどの整理をおこなったのち、写真資料のデジタル化を実施する。またこの作業と並行して、写真資料に付帯する基本情報のデータ化をおこなう。デジタルカメラ等で撮影された写真などの既にデジタル化されているデータについては、IDの付与(必要に応じてファイル名の変更)と基本情報の取得をおこなう。デジタル画像データの作成および確認作業の完了後、資料点数が確定した後に、当該資料をリスト化して著作権の所在を確認し、写真資料の撮影者、著作権者、所有者ごとに、民博との間で、利用許諾に関する覚書を交わす。
権利処理の手続きと並行して、画像データをデータベースにセットアップする作業を進める。データベースには画像の内容に関する基本情報の他に、画像認識AI(人工知能)によって自動的に付与されたタグ、またデジタル化作業に関する情報として、画像のフォーマット、入力機器情報、解像度、記載日などが記録される。以上の手続き・作業を経て、データベースが利用可能な状態になる。公募プロジェクトのメンバーはこのデータベースを用いて、逐次、入手できる情報を追加し、科研費の研究計画を遂行することになる。データベースに設定される項目は、①ID、②写真画像、③撮影者、著作権者、④撮影時期、⑤撮影地域(撮影当時の国名と現地名)、⑥民族名(同定可能な場合)、⑦記載日、⑧画像内容タグ、⑨関連情報(参考文献等)、⑩自由記述欄などとなる(原則、いずれも日英併記)。なお、写真資料はデジタル化した後、デジタル画像一式とともに公募プロジェクトに返却する。一方、公募プロジェクトによって入力された内容は、著作権者との間であらためて個々の画像についての公開・非公開の判断を含めて利用範囲を確認したうえで、一般公開される。
 また、公開セミナー『埋もれた写真を掘りおこす―データベースを用いた整理術の開発と応用』(令和2年5月17日(日))の開催を予定しており、研究活動の一環として写真資料の整理にたずさわってきた研究者が、整理の動機や社会的意義を紹介するとともに、その支援をおこなっている研究者がデータベース構築の足どりを紹介することにより、事業の広範な認知を得ることを目的としている。

2019年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、計20件の応募のうち、カテゴリーA[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化とテキスト情報の入力支援を必要とするもの]を5件、カテゴリーB[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化を必要とするが、テキスト情報の入力は申請者自身がおこなうもの]を5件、カテゴリーC[フィルムやガラス乾板などの資料を含まず、すでにデジタル化されている画像のデータベース化だけを必要とするもの]を5件、計15件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・研究支援協力者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、約51,000点のデータに基本情報を付与しサーバに登録した。現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。
その他の実績として、下記のような活動を実施した。
2019年5月25日(土)に国立情報学研究所に於いて、シンポジウム『地域コミュニティのメディアテーク』を開催し、本事業で主な支援対象としている研究者が世界各地で調査する際に撮影した写真や動画などの画像資料が持つ価値とともに、市井の人たちの手記が持つ学術的価値と、そうした写真をデジタルアーカイブズとして蓄積することの意義を考えた。

2018年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、カテゴリーA(画像の数が1件5,000点程度を対象とする)を4件、カテゴリーB(1件500~1,000点程度を対象とする)を4件、計8件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・連携研究支援者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約18,000点、データベース化・約23,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。
その他の実績として、下記のような活動を実施した。
①2017年10月7日(土)・8日(日)に国立民族学博物館に於いて、国際シンポジウム『変容する世界のなかでの文化遺産の保存』を開催し、研究支援分担者による発表を通じて、プロジェクトの趣旨を周知徹底するとともに、地域研究画像データベースの活用例について紹介し、本プラットフォーム事業を通じた写真資料の共有化による地域研究の展開の可能性について議論した。
②2017年12月16日(土)に横浜情報文化センター・情文ホールに於いて、国際シンポジウム『アラビア半島の文化遺産保護の現状と展開 サウジアラビアを中心として』を共催で開催し、研究支援分担者がパネリストとして国立民族学博物館での本事業の取り組みについてディスカッションをおこなった。

2017年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、カテゴリーA(画像の数が1件5,000点程度を対象とする)を4件、カテゴリーB(1件500~1,000点程度を対象とする)を4件、計8件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・連携研究支援者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約18,000点、データベース化・約23,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。 その他の実績として、下記のような活動を実施した。
①2017年10月7日(土)・8日(日)に国立民族学博物館に於いて、国際シンポジウム『変容する世界のなかでの文化遺産の保存』を開催し、研究支援分担者による発表を通じて、プロジェクトの趣旨を周知徹底するとともに、地域研究画像データベースの活用例について紹介し、本プラットフォーム事業を通じた写真資料の共有化による地域研究の展開の可能性について議論した。
②2017年12月16日(土)に横浜情報文化センター・情文ホールに於いて、国際シンポジウム『アラビア半島の文化遺産保護の現状と展開 サウジアラビアを中心として』を共催で開催し、研究支援分担者がパネリストとして国立民族学博物館での本事業の取り組みについてディスカッションをおこなった。

2016年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、5件の課題を採択し、採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究代表者・分担者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約12,000点、データベース化・約24,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。 その他の実績として、下記のような活動を実施した。
①2016年6月13日(月)に京都大学(稲森財団記念館)に於いて、公開フォーラム『写真が開く地域研究』を開催し、プロジェクトの趣旨を説明するとともに、地域研究画像データベースの活用例について特に技術支援の在り方を中心に検討し、本プラットフォーム事業を通じた写真資料の共有化による地域研究の展開の可能性について議論した。
②本プラットフォームで整理した写真データと研究成果を用いて、中部大学民族資料博物館で2016年12月5日~2017年3月8日に展示「アフロ・ユーラシア 内陸乾燥地文明展 黒アフリカ・イスラーム文明から考える」の開催、2017年1月から2月にかけ、奈良と東京で、写真展「世界遺産ナンマトル-太平洋の巨石文明の痕跡を求めて-」(関西外国語大学、NPO法人パシフィカ・ルネサンス主催、東京文化財研究所協力)が開催されるなど、科研プロジェクトの成果公開とそれによる成果の検証が可能となった。