国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

遺伝子化時代の社会集団のカテゴリー化と差異化―インドにおける血と遺伝子を中心に(2019-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A)) 代表者 松尾瑞穂

研究プロジェクト一覧

活動内容

2020年度実施計画(今後の研究の推進方策)

当初の計画では、来年度9月1日から一年間の予定で、エジンバラ大学に客員教員として滞在し、本課題の研究を実施する予定であった。しかし、現在、イギリスの大学が受け入れを中断しているため、今後の新型コロナウィルス感染症の影響如何では、再来年度に延期される可能性がある。その場合は、インドとスリランカにおける遺伝子に関する認識調査および、mixed raceであるアングロ・インディアンとバーガーという民族集団に関する現地調査に着手し、サヴィトリバーイー・フレー・プネー大学での共同研究を前倒しにして実行するなど、各国の状況に応じて臨機応変に予定を組み替える必要がある。この点について、各国の大使館等の情報を適時入手し、安全に留意しながら調査研究活動を実施する。
また、共同研究者とはオンライン会議等を活用し、議論を継続するとともに、文献資料の読解や先行研究のまとめなど、国内でできることを優先して課題の遂行に努める。

2019年度活動報告(研究実績の概要)

本研究は、インドにおける集団カテゴリーの構築と同定に用いられる血と遺伝子の論理について検討することを通して、集団の差異の「自然化 」や「実体化」にサブスタンスが作用するメカニズムを解明することを目的とする。サブスタンスとは、親子や家族、集団の間で共有し、継承されるとみなされる身体構成物質である。本研究が対象とするのは、インドにおける人種や民族、カーストといった集団の差異化において、 血と遺伝子をめぐる言説が、科学的知識として歴史的に生成され、流通し、機能している様態である。歴史、政治、ナショナリズムなどの絡み合いを解きほぐし、社会集団の範疇化や他者との差異化について検討を行うものである。
ただし、本年度は、まだ課題の交付が行われておらず、実質的な研究活動は来年度から開始する予定である。今年度は、南アジアの人種および近年の遺伝子や配偶子に関する人類学的民族誌などの文献資料の収集に着手し、文献リストの作成、調査訪問先の選定、資料の読解などを行った。また、来年度に実施予定であるイギリス・エジンバラ大学での共同研究と、インドおよびスリランカにおける短期調査の計画と必要機関との交渉などの準備を行った。

2019年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度は、来年度に実施予定であるイギリス・エジンバラ大学での共同研究とインドおよびスリランカにおける短期調査の計画と必要機関との交渉などの準備を行った。訪問先大学から客員教員として滞在することの承認と招聘状の送付が行われたが、2月以降、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、イギリスが出入国の禁止措置を取り、大学として外国人客員教員の受け入れを延期するという事態が発生し、来年度の訪問時期が不確定となっているため、ビザの申請手続き等が中断されている。