国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

戦後民俗学の展開に関するドイツと日本の比較研究――社会における学問実践の形(2007-2009)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 森明子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、戦後ドイツの大学における民俗学研究が、社会運動や文化運動、政治問題などの社会の動向と深く関わって展開してきたことに注目し、その多元的な過程を明らかにしていく。ナチス政権のプロパガンダとして利用されたドイツ民俗学は、戦後、脱ナチズムを至上命題としながらフォルク(国民/民族/民俗/常民)の文化を研究する、という困難な課題を背負って再出発した。「奇跡の経済」といわれた50年代以降、EU統合とグローバル化にいたる現在も、ドイツ民俗学は、社会の要請に敏感に反応しながら、その進むべき方向を探っている。この過程を、日本と比較しながら具体的にたどることを通して、社会における学問実践の形をさぐっていく。学問と社会の生産的な関係を探る。

活動内容

2009年度活動報告

1.内容―平成21年度は、以下のような研究実績をあげた。
(1)ドイツの民俗学の動向に関する情報収集:キール大学、ベルリン大学、ウィーン大学の各研究所を訪れ(森)、資料収集を行うとともに、それぞれの研究所における戦後の研究および教育の焦点の変遷、日本との比較をめぐって、現地研究者と意見交換した。
(2)7月4日に愛知大学国際コミュニケーション学会・三河民俗談話会でおこなわれたミニ・シンポジウムにメンバー3名が参加し、岩本は発表者として、森と重信はコメンテーターとして、研究発表をおこなった。
(3)9月と3月に、それぞれ2日間にわたってメンバー全員が会合し、研究状況の報告と意見交換を集中的に行った。学会報告、研究論文・著書の出版は各自で進めた。また、本研究で昨年度訪れたゲッティンゲン大学のベンディックス教授から、国際出版の1章を執筆するよう依頼され、森が英文論稿を執筆した。最終年度として、成果公開の論文集出版についても具体的に計画した。
2.意義と重要性―本研究は、民俗学のナショナルな性格と社会における意味を、文化人類学、民俗学、メディア史の学際的な視点から問い直そうとするもので、ドイツの民俗学研究者とも問題関心を共有し、国際的に相対化した視点から、学問実践の社会におけるあり方をとらえようとするところに意義がある。最終年度、ドイツの研究者との協力関係はさらに広がり、隣接する複数分野による国際的な共同研究として、また、学問と社会の関係を再考する新しい人文社会科学の模索として重要である。

2008年度活動報告

1.内容-本研究は、戦後ドイツの大学における民俗学研究が、社会の動向と深くかかわって展開した、多元的な過程を明らかにしようとする。平成20年度は、以下のような研究実績をあげた。
(1)ドイツの民俗学の動向に関する情報収集:フランクフルト大学、マールブルク大学、ゲッティンゲン大学(以上、森、重信)、ハンブルグ大学(岩本、法橋)、ウィーン大学、ミュンヘン大学(以上、佐藤)の各研究所で、講義記録やローカルな研究誌、施設などについての資料収集を行った。
(2)ドイツの大学研究者との意見交換:ベンディックス、ブラウン、ベッカー、レーマンの各教授と面談し、それぞれの研究所における戦後の研究および教育の焦点の変遷、日本との比較をめぐって意見交換した。
(3)現段階の問題点の整理と研究発表:収集した資料にもとづいて、3月に2日間にわたってメンバー全員が会合し、研究状況の報告と意見交換を集中的に行った。学会報告、研究論文・著書の出版は、各自で進めた。
2.意義と重要性ー本研究は、ドイツの民俗学が、社会から何を期待され、社会に対して何を貢献してきたかを、文化人類学、民俗学、メディア史の間領域的な問題としてとらえ、日本と比較するもので、この問題関心をドイツの民俗学研究者と共有して、学問のナショナルな性格と社会における意味を、国際的に相対化した視点からとらえようとするところに意義がある。2年目にはいってドイツの研究者との協力関係はさらに広がり、隣接する複数分野による国際的な共同研究として、また、学問と社会の関係を再考する新しい人文社会科学の模索として、重要な意味をもっている。

2007年度活動報告

1.内容-本研究は、戦後ドイツの大学における民俗学研究が、社会の動向と深くかかわって展開した、多元的な過程を明らかにしようとする。平成19年度は、以下のような研究実績をあげた。
(1)ドイツの民俗学の動向に関する文献資料および情報の収集:国内およびドイツの大学研究所において、文献を中心とする関連資料の収集をおこなった。ドイツでは、テュービンゲン大学、ミュンヘン大学、フライブルグ大学、ハンブルグ大学の各研究所で、講義記録や弱小研究誌、建造物も含めた資料や施設にあたった。
(2)ドイツの大学研究者との意見交換:ドイツの各研究所の歴史、研究および教育の状況、日本との比較について、森(研究代表者)、岩本(研究分担者)、重信(研究分担者)が、チョーフェン、ヨーラー、バウジンガー(以上、チュービンゲン大学)、モーザー(ミュンヘン大学)と意見交換を行った。
(3)現段階の問題点の整理と研究発表:収集した資料のデータベース化を進め、7月と3月それぞれ2日間にわたって、メンバー全員が会合し、研究状況の報告と意見交換を集中的におこなった。学会報告、研究論文・著書の出版は、各自で進めた。
2.意義と重要性-本研究は、ドイツの民俗学が、社会から何を期待され、また、社会に対して何を貢献してきたかを、日本との比較の視点からとらえようとする意図をもっている。このテーマを、文化人類学、日本民俗学、メディア史の間-領域的な問題としてとらえて研究を進めるとともに、その問題関心を、ドイツの民俗学研究者と共有して、学問のナショナルな性格と社会における意味を、国際的に相対化した視点からとらえようとするところに意義がある。初年度の研究としてドイツの研究者との協力関係が動き出していて、隣接する複数分野による国際的な共同研究として、また、学問と社会の関係を再考する新しい人文社会科学の模索として、重要な意味をもっている。