国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

バスケタリーをめぐる植物生態と民族技術の文化人類学的研究(2019-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 上羽陽子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、「バスケタリー」という新たな学術対象を開拓し、その使用材料(編み材、組み材、結束材)に注目しつつ、ヒトによる植物利用の一側面を人類史的な視点から明らかにすることである。
従来の民俗学等では、このカテゴリーを編組品と呼び、籠・箕・笊・筌・魚籠などのかご類を重視してきたが、本研究では、罠、敷物、壁材、家、橋、舟も含めたより包括的な製作技術に焦点を当てる。
バスケタリーの使用材料を生み出すための民族技術に焦点をあて、複数の地域を対象として、文化人類学・生態人類学・民族芸術学・考古学・民族植物学による多様な視座をもちいて、植物加工技術と生態資源利用の関係性を明らかにし、ヒトにとっての始原的なものづくりの意味の解明に迫る。

活動内容

2020年度実施計画

本研究では、①インド北東部アッサム地域、②インドネシア西ティモール、③マダガスカル中央高地ザフィマニリの三調査地域での共同調査を実施する。加えて、工業製代用資源が豊富な地域との比較調査も実施する計画である。
本年度は、インドネシア西ティモールにおいて共同調査をおこなう。西ティモールは標高400~2500mに位置し、年間降水量900~2000mmのサバナ気候である。乾期と雨期が明瞭で、ココヤシ等の果樹を中心に多様な有用植物が混植された混合樹園地が発達している。西ティモールでは、ヤシ科植物を中心とし、調査項目にそって共同調査を遂行し、データ集積と解析をメンバー全員でおこなう。
具体的には、以下の調査項目に従って上記の問いに取り組む。
1)素材植物の生態と生産管理、2)使途に応じた素材の選択、3)使用材料への加工技術、4)製品までの製作技術、5)加工道具の有無や利用法、6)生産構造と社会関係
これらについて個人および集団のレベルで明らかにし、相関関係を比較・検討する。