国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アフリカ内水面における「よそ者」に着目した持続的水産資源管理構築に関する研究(2019-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|特別研究員奨励費 代表者 稲井啓之

研究プロジェクト一覧

目的・内容

アフリカ内水面漁業における持続的な水産資源管理について考察することが本研究の目的である。そのために,移動漁師と地元住民とを結びつける社会関係の重要性を解明したうえで,アフリカ内水面において「よそ者」と地域コミュニティとが協働する新たな形の資源管理アプローチを構築する。カメルーン共和国の最古のダム湖であるバメンジン湖と最新のダム湖であるロムパガール湖を調査地とし,長期の海外現地調査を実施する。
まず,これまでの資源管理政策において重要でありながら看過されてきた漁業キャンプや水産資源利用の量・質的な把握と詳細な記録を行う。次に,移動漁師と関係する様々なアクターとによって形成されている社会ネットワーク構造の特徴を把握するための聞き取りと観察調査を行う。以上に基づいて,新旧2つのダム湖漁業の比較を通して,移動漁師と地域コミュニティとの協働による持続的資源管理を可能とするための社会的要因を解明する。

活動内容

2020年度実施計画

令和2年度は令和元年度の学会発表および現地調査の成果を論文として公表することを第一に進める。また,スペインでの国際学会とフランスでの研究会での報告と,カメルーンでのフィールドワーク調査を実施し、乾季の漁業活動に関する量的データの収集と,調査対象地の湖における「よそ者」漁師と地元住民との社会関係についての聞き取り調査をおこなう。
なお,コロナウィルスの影響で渡航ができない場合は,電話やインターネット媒体を用いて渡航予定先の研究者や調査協力者などと連絡を取りあって情報収集や議論をおこない,論文執筆に専念する。

2019年度活動報告

スペイン王国・バルセロナ,カメルーン共和国・アダマワ州および東部州,フランス共和国・パリにおいて,資料収集と研究打合せ,およびフィールドワーク調査を実施した。
まず,スペイン王国・バルセロナにある北極域研究センター図書館にて水産資源利用者の社会関係の研究に係る資料の収集・調査等をおこない,社会関係資本の視点からの水産資源管理アプローチという情報について,バルセロナ自治大学・極地研究所において議論し,その情報の確度の確認およびアフリカにおける応用可能性などといった当該研究における別の角度からの取組について知見を得て,今後の「よそ者」である出稼ぎ漁師と地域コミュニティとによる共同水産資源管理構築に関する研究を進める上での問題点を解決することができた。
次に,カメルーン共和国において内水面における水産資源利用実態解明のために現地調査を実施した。同国アダマワ州にあるムバカウ湖および東部州にあるロム・パンガール湖の2つの湖において,漁業実態および流通実態に関する観察および聞き取り調査を実施した。これによって,現在のカメルーンにおける水産物生産と流通の全容が明らかとなり,水産資源管理にまつわる問題点を明らかにすることができた。
最後に,フランス共和国パリにあるパリ第一パンテオン・ソルボンヌ大学およびフランス国立開発研究所において,アフリカにおけるコミュニティ主導水産資源管理研究に係る資料の収集・調査等をおこなった。パリ第一パンテオン・ソルボンヌ大学地理学部において議論し,これらの情報の確度やこれからの研究発展の可能性などについての知見を得て,次回調査での具体的な調査項目を立て,プロジェクト遂行の目処を付けることができた。また,共同研究ユニットとの国際共同研究の実施を取りつけた。