国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

東地中海域における小規模漁業の漁場利用生態と漁場管理制度の統合的解明(2019-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|特別研究員奨励費 代表者 崎田誠志郎

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究では、ギリシャおよび周辺諸国における小規模漁業の展開に着目し、各国の小規模漁業を取り巻くマクロな漁業管理制度や多層的な主体間関係と、沿岸域におけるローカルな漁場利用の生態的側面を明らかにする。それらの結果を比較統合することで,東地中海域における小規模漁業の多様性と共通性を解明することが本研究の目的である。
研究方法はフィールドワークを中心とする。現地では関係主体への聞取り調査を行い、小規模漁業管理にかかわる制度および主体間関係について明らかにしていく。漁場利用の生態的側面に対しては、(1)小型GPSおよび乗船調査による漁業者の行動の時空間的把握、(2)漁獲物の集計による資源利用の把握、(3)海図等を用いた漁業者の環境認識・知識の把握という3点から解明を進めていく。

活動内容

2020年度実施計画

新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延を受けて、少なくとも本年度前期は調査の実施を自粛せざるを得ない。そのため、本年度は後期(10月から3月)に集中して現地調査をおこなう計画を立てている。2020年10月ごろから2ヶ月ないし3ヶ月の中期にわたってギリシャに滞在し、レスヴォス、メソロンギ、ヨアニナといった各調査地域での現地調査を実施する。また、前年度の打ち合わせ、調査計画の打診、資料収集等の結果を踏まえ、ギリシャ滞在中もしくは別途日本から、キプロス・クロアチアへの渡航・現地調査を実施する。また、日本人研究者として、国内漁業の最新動向にも目を配る必要がある。前年度同様、これまで調査をおこなってきた鳥取県湯梨浜町や和歌山県串本町での定点観測を今年度も継続するとともに、北海道西部における漁協運営についても動向を把握することで、日本漁業の現状をより総合的に理解する。これら国内調査も年度の後期におこなうことになるため、前期は文献探索・論文執筆等に注力する。ただし、計画の推進にあたってはCOVID-19の蔓延状況を常に注視し、必要に応じて柔軟に計画を変更する。
2020年に参加予定であった国際学会は、2020年4月の時点で多くが中止ないし開催の是非を検討している状況にある。一部はオンライン会議となるものもあるため、本年度予算でwebカメラ等の環境を整備して対応する。国内では、日本地理学会2020年秋季学術大会、同2021年春季学術大会、2020年人文地理学会大会、地域漁業学会第62回大会等への参加を予定している。そのほか、前年度に投稿できなかった諸成果の投稿作業を加速させていく。

2019年度活動報告