国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

現代ビルマにおける宗教的実践とジェンダー(2010)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 飯國有佳子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

■ 刊行の目的
ビルマの村落に関する人類学的研究の成果であるモノグラフは、これまで社会主義化以前の調査に基づく2冊を数えるに過ぎない。そこで本書は現代ビルマにおける宗教とジェンダーをめぐる秩序が、急激なモダニティとグローバル化のなかでいかなる変容を遂げつつあるのかを具体的民族誌資料から明らかにすることを通して、これまでのビルマ村落研究の空白を埋めることを大きな目的とする。
■ 内容
本書は、上ビルマ村落部における現地調査をもとに、上座仏教社会における女性の宗教的実践を明らかにすることをとおして、出家可能な男性の視点から進められてきた既存の研究を再考した文化人類学的研究の成果である。本書の主要な考察点は、(1)問いの射程:女性の宗教的実践の周辺化(序章)、(2)日常生活のなかの宗教とジェンダーの様態(第1、2、3章)、(3)儀礼からみるジェンダー(第4、5章)、(4)現実の多様性:宗教とジェンダーをめぐる今日的状況(第6章)の4点である。これらの分析から、上座仏教社会におけるジェンダー化された宗教的二元論に収まりきらない現実を的確に掴むには、各々の「界」における文化的正統性をめぐる闘争の緻密な分析とともに、それらを社会空間全体のなかで捉えなおす必要があること、そして人々の宗教的実践をカテゴリーの問題に帰するのではなく、エージェントのジェンダーに留意しながら、個々の実践により深く分け入る必要があることを結論として導き出した。