国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館外での出版物

アンデス世界――交渉と創造の力学

2012年4月12日刊行

染田秀藤、関雄二、網野徹哉 編

世界思想社

出版物情報

主題・内容

歴史学・人類学・考古学の立場から、アンデス世界とそれにまつわる言説の創出・発展・変容過程で生じた多様なコンフリクトの真相に迫り、その歴史的意味を論じている。
2009年に大阪で、国立民族学博物館と大阪大学のGCOEプログラムとの共催でおこなった国際シンポジウムの成果をまとめたもので、海外研究者7名を含む第一線の研究者と新進気鋭の若手研究者による画期的な企画である。

目次

はじめに
Ⅰ 歴史の語り方、語られ方
1 アンデス関係のクロニカをめぐるコンフリクト―ナポリ文書と『新しい記録と良き統治』(染田秀藤)
2 インカ史再構築に立ちはだかる対立意見と既成概念―クスコの貴族階級をめぐって(フランシスコ・エルナンデス・アステーテ)
3 コンフリクトと統合 インカ国家の領土拡大をめぐって―コリャ人、ルパーカ人、チムー人、チャチャポヤス人との対立(エルナン・アマット・オラサバル)*佐藤吉文 訳/染田秀藤 監修
4 征服をいかに語るべきか(キャサリン・ジュリアン)*小山朋子 訳/染田秀藤 監修
5 信仰の眼差しがみるもの―アンデスにおける魂の征服再考(ケニス・ミルズ)*佐藤正樹 訳/網野徹哉 監修
6 何を記憶すべきか―植民地期(一六~一七世紀)のアンデス先住民による「時間」と「出来事」の記憶化をめぐる考察(ホセ・ルイス・マルティネス)*八木百合子 訳/関雄二 監修
Ⅱ 交渉と創造の社会史
7 一七世紀インディアスにおける紙・書類仕事・公証人(マリア・クララ・ロペス・ベルトラン)*吉江貴文 訳
8 公証人帳簿と「書かれたもの」の力(吉江貴文)
9 訴訟制度のなかの先住民―一七世紀ペルー・ワマンガ地方の三つの事例を通して(溝田のぞみ)
10 スペイン支配下のアンデス先住民社会における権力構造の変容解明に向けて―一七世紀ペルー副王領チュクイト地方を中心に(小山朋子)
11 憑依の社会史―初期ペルー植民地における宗教・政治的コンフリクトの一断面(網野徹哉)
12 聖女に捧げられた大聖堂―近代ペルーの都市建設に埋め込まれたコンフリクト(八木百合子)
Ⅲ コンフリクトのアルケオロジー
13 戦うことの意味―アンデス文明初期における戦争と世界観(関 雄二)
14 形成期に組織的な暴力行為は存在したか―図像表現を政治的言説として再考する(ペーター・カウリケ)*土井正樹 訳/関雄二 監修
15 先スペイン期アンデスにおける小集落経済への国家の関与―ワリ国家の首都と小集落との関係(土井正樹)
16 ティワナク現象という視点―ティワナク国家論の再考に向けて(佐藤吉文)
参考文献
索引
執筆者・翻訳者紹介