国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館調査報告(Senri Ethnological Reports)

No.47 Music: the Cultural Context

2004年2月19日刊行

Robert Garfias

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刊行の目的および意義

形態はことなるにせよ、音楽はあらゆる人間社会に存在し、過去においても存在したと考えられる。音楽(と一般に見なされているもの)の起源は議論の的であり続けている。話し言葉の起源や、動物のコミュニケーションの方法が言語に相当するのかといった議論と同様に、音楽の起源に関する議論は、音楽が人類独自の活動であるという考え方を疑問視する。最近発見された、ネアンデルタール人が使用した指穴つき骨製横笛は、ホモサピエンス以前に音楽があったことを明白に示す証拠である。
本研究は、音楽が人類にとって普遍的存在であるならば、音楽はそれを使用する人間社会を知る有効な手段であることを前提としている。民族音楽学における過去60年間余りの研究は、世界の音楽体系は高度に多様であり、それぞれが独自性を保っていることが多いことを示している。相互接触のない文化は音楽構造や表現面で独自の体系を発達させるのに対し、接触のある文化は相互に選択的借用や順応をおこない、伝承、伝播、独創性の組み合わせから複雑な文化様式を形成していった。音楽を伝承する方法や外部からの影響に反応する方法は、より広義の文化様式の反映である。したがって、音楽の構造と実践から社会構造について多くを知ることができる。
本研究は二部から構成される。第一部では音楽伝統の伝承、また外部からの影響の受容と変容をテーマとし、そこにおける政治、社会、経済面の力作用を考察する。第二部では、文化的脈絡と音楽構造の構成要素との関係についてより詳しく検討する。複雑な構造をもつ音階・音高組織やリズムの統合システムは数多く存在し、楽器の変容・発達の過程と同様、外部からの文化に影響されている。
したがって、音楽は、言語の場合と同様、社会の重要なバロメーターとして、また社会に作用する変化や影響の指標として機能しているのである。

 

CONTENTS

Part one Cultural Context
A Beginning
How Did It All Start
The Cultural Context
How Culture Determines Structure
Choice, Preference and Cultural Perimeters
Cultural Contact and the Dissemination of Music
Music across Cultures
Diffusion and Mixing Politics and Music
The Pace of Change in Music
Part two Structure of Music
Structure in Music
The Perception of Pattern in Music
Time and Perception in the Structure of Music
How Music Organizes Time
How Music Plays with Time
Tone Systems and Formal Structures
Theories of Music
Musical Style
How is Music Learned?
Musical Instruments
How an Ethnomusicologist Looks at Music
 

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