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国立民族学博物館調査報告(Senri Ethnological Reports)

No.68 モノに見る生活文化とその時代に関する研究――国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションを通し

2007年3月26日刊行

横川公子・笹原亮二 編

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刊行の目的および意義

本書は、平成14年(2002)度から平成16年(2004)に実施した民博の共同研究「モノに見る生活文化とその時代に関する研究―国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションを通して―」(代表 横川公子・武庫川女子大学教授)の研究成果の報告書である。本共同研究は、平成12年(2000)に民博が収集した大村しげコレクションに関するものである。同コレクションは、京都在住の随筆家として、また、京都の日常的な総菜を「おばんざい」として全国に紹介した料理研究家として有名で、平成11年(1999)に亡くなった大村しげが、生前暮らしていた京都市中の家に残されていた生活用具類を一括して収集したものである。
共同研究では、先ず、同コレクションに含まれる物品について整理・分類して写真撮影を行い、資料としての基礎的データを整備し、それらの内容と数量などの全体像を明らかにすることを試みた。その結果、衣食住関係から信仰関係、社会関係、趣味娯楽関係、著作物関係など、彼女の生活全般に渡る約1万5千件、資料数にしてその数倍の物品を目録化することができた。
そうした同コレクションの整理・分類作業の一方で、大村しげという人物の生涯や思想、彼女が生きた京都という地域と時代状況との関係、彼女が残した物品と彼女の著作との関係、京都の食文化と「おばんざい」との関係などに関して、共同研究会の開催を通じて議論を重ね、同コレクションの総体的な把握に基づき生活文化研究を行う際の問題点の抽出や整理を行った。
本書はそうした共同研究の成果を収録したものである。同時代的な生活文化の研究は、研究する側各自の経験と研究対象が重複するために、印象批評的な次元に止まるものが少なくない。本書はそうした領域の研究に対し、大村しげコレクションという具体的かつ豊富なデータと、そこから立ち上げた様々な問題や分析の視角を提供することで、議論の深化と活性化に資するものといえる。

 

目次

I. はじめに
 ……………… 横川公子
II. コレクションの概要
1. 所有物全品収集――民博所蔵大村しげコレクション収集の経緯と特徴
 ……………… 笹原亮二
2. 大村しげコレクションのものの周辺
 ……………… 横川公子
3. 調査の方法
 ……………… 横川公子
4. 大村しげコレクションの内容構成
 ……………… 横川公子
5. 特徴的なモノの概要
 衣類と繊維製品
 ……………… 相川佳予子
 収納の装置
 ……………… 横川公子
 信仰関係資料
 ……………… 笹原亮二
 執筆したもの
 ……………… 横川公子
 執筆に関連するもの
 ……………… 森理恵
III. 研究報告
1. ことばとモノ
 ……………… 笹原亮二
2. 大村しげの都心居住
 ……………… 角野幸博
3. 大村しげのこだわり――ものの収納場所と収納用具から
 ……………… 横川公子
4. 大村しげの「おばんざい」を支えた台所と台所道具――生活技術と社会技術のはざまに
 ……………… 山口昌伴
5. 「おばんざい」の思想
 ……………… 大塚滋
6. 大村しげと「おばんざい」
 ……………… 藤井龍彦
7. 大村しげ寄贈品における女物和装履物についての報告
 ……………… 磯映美
8. 大村しげコレクションにみる“着物リフォーム”――12点のワンピースから
 ……………… 林八千木
9. 書かれたモノ、遺されたモノ
 ……………… 相川佳予子
10. 大村しげの思想――文筆活動の軌跡と民博収蔵品
 ……………… 森理恵
IV. 資料大村しげ執筆記録
 
付属CD-ROM 大村しげコレクション資料目録,資料写真
 

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