国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「コラム」:日本かぼちゃのトンガ流通 誰の口に入る?トンガ産カボチャの行方

森本利恵

日本では、昔から「冬至にカボチャを食べると、かぜをひかない」という言い伝えがある。カボチャには、幾つか種類があるが、現在の主流は、栗のようにホクホクとしたクリカボチャ、エビスナンキンなどの西洋カボチャである。

南太平洋のトンガ王国では、1987年からカボチャ栽培が換金作物として島に導入された。トンガで収穫されるカボチャは、日本の種を使って作られ、そのほとんどが日本に輸出されている。従って、トンガ産カボチャもそうした日本の需要に合わせて、エビスカボチャなど西洋カボチャが作られている。

毎年10月から11月に出荷され、日本の端境期にあたる冬から春にかけて、日本の市場に出回る。トンガの人々がカボチャを作るのは、他の換金作物を作るより短期間で収穫できるし、キロ当たりの値段がいいからである。

日本では、国内産カボチャは北海道や東北で主に栽培されている。ちなみに、北海道では、トンガ産カボチャをほとんどみかけない。その一方で、西日本のスーパーでは、4分の1や2分の1にカットされたトンガ産カボチャが毎年売られている。

さて、トンガの人々はカボチャを作ってはいるが、食べているのだろうか?トンガの人々の主食はイモ類で、カボチャはそれほど食べない。収穫されたカボチャは、選別場で傷があったものや、規格外のサイズのものは返却される。各栽培農家は、返却されたカボチャや畑に余ったカボチャを家庭で飼育するブタの餌にする。

ちなみにトンガ在住の日本人が経営する焼酎工房では、このトンガ産カボチャを使ったカボチャ焼酎が商品化されている。日本では、カボチャの種が健康食品にもなるが、トンガ人のご馳走はカボチャを食べて育ったブタであることにはちがいない。