国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「コラム」:留学生座談会 留学生たちの食卓

陳夏晗
アグネシカ・マジェッツ
チャン・マイン・ドゥック

院生室にて
Q:みんな、どこの国の出身ですか?日本に来て何年目ですか?
陳(チ):中国です。5年目くらいですね。
ドゥック(ド):ベトナム。6年目。
アグネシカ(ア):ポーランドです。私も5年目です。
Q:今、生活しているのはひとりですか?
チ:ひとりです。
ア:私もひとりです。
ド:僕は3人。家族で。

Q:日本に来て初めて日本食を食べたのですか。それとも、自分の国でも日本食はよく食べていましたか?
ド:僕はね、日本に来る前にマレーシアで1年間、日本語を勉強しました。以前は、ベトナムでは日本語は勉強できなかったから、マレーシアに行って勉強した。その間、先生は日本人。だから、時々パーティーがあって、先生が自分で料理を作ったりとか、店で買ったりとか。先生と一緒にレストランに行って、日本料理を食べました。
Q:そのとき最初に食べた日本料理って覚えてる?
ド:先生が作ったおにぎり。
Q:ベトナムっておにぎりないよね。
ド:食べてもあまり好きではなかった。これは日本らしい日本料理ですね。
あと、先生と一緒に店で食べて、先生はこれは日本料理らしくないと言っていた。日本料理といってもマレーシアの材料で作ったとか。でも、僕はその時はよくわからなかったけど。

Q:アグネシカさんはどう?
ア:日本に来る前に日本食を食べるチャンスはほとんどありませんでした。回転寿司とかそういうお寿司屋さんはありますけど、少し。特に首都にありますけど、食べたことはないです。
Q:じゃあ、日本に来てからはじめて日本食食べた?
ア:はい、はじめてです。
Q:食べてみてどうでしたか?一番最初に食べた日本料理って覚えてる?
ア:ええ、それは回転寿司。生魚をはじめて食べました。おいしかったです。
Q:抵抗はなかった?
ア:大丈夫!
Q:ポーランドの日本料理屋さんは高いですか?
ア:そうですね。高いです。
Q:ポーランドでは生の魚食べますか。
ア:ああ、それは全然食べないです。
Q:でも、日本に来て食べるときには、エッとか思わなかった?
ア:魚は全然大丈夫ですけど、うにとか、いかとかがちょっと苦手。

Q:じゃあ、陳さん?
チ:日本に来る前に日本料理を食べたことがある。日本酒飲んで、焼き魚とか食べたこともある。また、寿司も食べたことがある。中国で。
Q:そのときのお寿司は日本に来てから食べたお寿司と印象は違いますか?
チ:ええ、違いますね。結構、日本のは、刺身を使っているね。刺身、生魚。中国では使っていなかった。魚を使っていても、ちょっと煮て、上に。
Q:日本でいうと、アナゴとかうなぎとかは魚を煮てからお寿司の上にのっけてるんだけど、そういう感じかな?イメージとして。
チ:ええ、上にのることもあるし、中に入ることもある。
Q:握りずし、それとも巻き寿司?
チ:巻きも。うん、両方ある。
Q:お魚の内容はだいたい一緒ですか?例えばまぐろとか?
チ:まぐろはあまりないねえ。ええ、魚の種類、結構違うと思う。
Q:お寿司でも?
チ:うん、お寿司でも。

Q:陳さん、中国では肉はどのようなかたちで売られているの?
チ:丸ごと売られていることもあるし、毛や内臓を取り除いて売られていることもある。
ド:丸ごとの方がおいしい。でもベトナムでは北部と南部で肉の売られ方に違いがあります。北部では自分で動物をさばくけど、南部では仏教徒が多いので、そこまでスーパーで処理されています。

Q:日本のレストランで提供されている自国の料理は自分の国のものとおなじですか?
ド:味が全然違います。日本のスーパーで売られているベトナム料理を買ったことはありません。ベトナムの料理は家で作るし。
チ:上海ガニにはホンモノとニセモノがあるよ。養殖場所によって、味がまったく違うの。

Q:日本の中華料理には、中国それぞれの地方の特色がはっきり現われていますか?
チ:日本の料理にはそれほど違いは現われていません。
Q:ポーランドでは中華料理は?
ア:食べたことありません。ポーランドには中華料理というジャンルはなくて、ベトナム料理などを含めて「東洋料理」と呼ぶんです。そのなかには日本料理は入っていません。
Q:おもしろいですね。そこは高いのですか?
ア:高くありません。平均的なレストランよりも安めです。おいしいですよ。安いので、ランチタイムには特に学生客が多いです。

Q:アグネシカさん、日本のポーランド料理店に行ったことは?
ア:ありません。東京のほうにあるかも。だから外食のときは、回転寿司や中華料理、お好み焼きが多いですね。

Q:なにか作れる日本料理はありますか?
チ:ゆでだこが好きなんですけど、刺身が苦手なので、塩に半日漬けて、きゅうりの塩もみと一緒にたべます。
ド:ぼくはおでん。こんにゃくや大根、肉、もち巾着、ちくわ、たまごをいれて食べます。あとは牛丼ですね。日本で初めて食べたんですけど、おいしかったのでインターネットで作り方を調べて食べます。あとはたこ焼き。専用のたこ焼き機も持ってますよ。おおばや海老もいれます。マヨネーズと鰹節でたべます。
ア:わたしはお味噌汁くらい。あとは一回だけお好み焼きを作ったことがある。
Q:味噌汁の味に抵抗ありませんでしたか?
ア:最初ありました。でも徐々に好きになりました。具はうすあげ、わかめとか、ねぎですね。
Q:海草に抵抗ありませんか?
ア:生き物ではないので大丈夫でした。

Q:日本で無性に自国の料理を食べたくなるときはありますか?
ア:クリスマスのとき。お母さんの料理。餃子のような、中にカッテージチーズなどが入っているもの。「ペロニ」という。作るのに時間が掛かるし、特別なもの。自分では作れない。
ド:家族が一緒だから。
チ:海鮮類。カニとか伊勢エビとか。日本では高いし種類も違うから。私は中でもカニが好き。
Q:日本のカニでも海の近くに行けば安いよ。
チ:行ったことない。でも日本の足の長いカニは美味しいと思う。高いのは美味しいよね。
Q:日本では手に入らない食材は?
ド:肉まるごとなど。あと、アヒルなどの血。
チ:中国でも血を食べるよ。
Q:どうやって食べるの?
チ:豆腐のような形になっていて、それを鍋などにして食べる。血は肺をきれいにしてくれるのよ。

Q:お弁当って食べる習慣はある?
ド:ない。ベトナムの街中では安く食べ物がたくさん売っていて、会社の近くにもお店がたくさんあるから、そこでみんな食べる。30年前、お店が今ほどたくさんなかったときは持って行っていたけれど。
Q:ここは学生食堂がないけど、いつもみんなお昼はどうしているの?
ア:サンドイッチなどを買って持ってきている。
ド:日本に初めて来た時は学食などを使っていた。今はここでは食べずに食べてから来る。
チ:自分で作った弁当をもっていく習慣はない。おにぎりとかラーメンとかを買って食べる。
ド:あと、日本とベトナムでは米が違う。日本の米はモチゴメに近い。日本に最初来たときは、柔らかすぎてゲッと思った。でも今はベトナムに帰ると米が硬くてゲッと思うようになった。ベトナムのお米を食べられなくなった後輩もいる。お米にもいろんな種類がある。
Q:アグネシカさん、じゃがいもはどうやって食べるの?
ア:マッシュポテトや、まるごと。お皿にじゃがいもとサラダとお肉をのせて、お肉などと一緒にじゃがいもを食べる。
Q:じゃがいもは何種類もある?
ア:あるけど詳しくない。
ド:あと、ベトナムでは冷たい麺を食べない。日本ではじめて食べた時、美味しくないと思った。
チ:中国では・・・知らない。北では食べるかもしれない。
Q:中国とベトナムでは箸を使うけれど、ポーランドでは使わないよね?
  アグネシカさん、箸を使うのは難しくなかった?どこで習ったの?
ア:日本に来てから習った。今ではフォークよりお箸の方がいい。お箸はフォークより自由だと思う。大きくなったり小さくなったりするから。できている素材もフォークよりいい。フォークは歯にあたるとキーッとなるから。
ド:日本人は柔軟だと思う。他の国で、手で食べる習慣があっても、ベトナム人より日本人の方が早く順応していたから。
ア:日本人だってお寿司とか手で食べるよね!


どうもありがとう。とっても興味深いお話でした。


2006年2月28日 民博内院生室にて収録。