国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「世界を食べる日本」:ハンガリー編 ハンガリー料理のスリムアップ

大塚奈美

皆さんは、ハンガリーという国のことをどのくらいご存知だろうか。ヨーロッパにあるということくらいは知っている人、全く知らない人、様々であろう。

ハンガリーは中央ヨーロッパの一国で、大きな平原がある。その大平原では、ハンガリー名物の「灰色牛」が放牧されている。日本で最も知られるハンガリー料理の一つが、この牛の肉を使ったスープ「グヤーシュ」であろう。

日本におけるハンガリー料理店は、ハンガリーを訪れた日本人が、その風土や料理にひかれて日本で開店、という場合が多いようである。ハンガリー料理を日本で紹介するとき、名称を翻訳しないでカタカナ表記することが多いが、まずその段階でかなりの誤差が生じる。カタカナへの転記自体も難しいため表記の揺れが見られるが、なぜか英語風に訳されることも少なくない。鶏肉のパプリカ煮も「パプリカ・チキン」などの名でよく登場するが、脂の少ない、日本風の仕上がりになっていることが多い。

ハンガリー料理が日本に入ってきたときに生じる大きな変化として、脂肪分の減少のほかに、量の変化がある。ハンガリーでは、とにかく一皿の量が多い。日本のように、たくさんの種類を少しずつ食べるのではなく、一種類を大量に食べる習慣がある。スープ、サラダと主菜、デザートまで食べようと思ったらかなりの難業である。日本では、そこは日本人向けに量を調整しており、ハンガリーのハンガリー料理を食べるようなつもりで行くと、物足りないと思うこともあるが、食べきれないで残すことがないので、合理的である。

日本においても、日本人向けではない本格的なハンガリー料理を出す店が名古屋にあった。経営も調理もハンガリー人がしており、ほぼ本場ハンガリーの味を味わうことができたが、しばらくして閉店した。立地の問題もあり、本格的なハンガリー料理というだけでは経営が難しかったのかもしれない。日本におけるハンガリー料理はまだまだ知名度が低く、発展途上段階にある。