国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

バリ島の仮面(トペン) 2013年12月20日刊行

吉田ゆか子

みんぱくでは、バリ島の仮面劇トペン・パジェガンに用いられる一連の仮面を展示している。この演目には、台本も無ければ演出家もいない。演者は一定のルールの範囲内で即興的に演じる。仮面が命を吹き込まれ生き生きと演技するようにと、演者は仮面に供物を捧げ、また各仮面の「性格」に相応しい歩き方、話し方、話題を探求する。バリの演者は、仮面の表情に導かれ演技するのである。

その意味で、仮面職人もこの演目の重要な担い手である。彼らの意図やアイデアは仮面に盛り込まれ、仮面を通して演者や観客に働きかけるからである。なお職人が最も気を使うのは目だという。目の入れ方で、仮面の目線や表情が大きく変わる。例えばこの2つの仮面は大臣である。先陣を切って戦いに挑むこの役どころは、大きく見開いた目で力強い視線を観客に投げ返す。みんぱくの2つの大臣の面はよく見ると大分異なる表情をしている。上手な演者であれば、仮面の特徴に応じて微妙に舞の内容を変えるであろう。

中には顔の上半分だけを覆う仮面もある。口の部分が開いるこのタイプは語りのシーンに登場する。ひしゃげた顔の仮面があるが、これはジョークのネタとなる。どのように歩き、どんな声色で何を語りそうな「人物」か。仮面を眺め、想像を巡らせるのは、展示場の一つの楽しみ方である。

吉田ゆか子(先端人類科学研究部機関研究員)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:(左)H0151648、(右)H0151645/資料名:バリ島の仮面

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