国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

サントメ砂糖紀行

(1)ギニア湾の小島  2019年11月2日刊行

鈴木英明(国立民族学博物館助教)


16世紀建造のサン・セバスチアーノ要塞(ようさい)。現在は国立博物館になっている=サントメ島で2019年1月、筆者撮影

サントメ島、あまり馴染みのない地名かもしれない。この島は隣島プリンシペとともに、サントメ・プリンシペ民主共和国を形成する。総人口、20万人強。元ポルトガル領。テレビでときたま取り上げられるようなので、知っている人もいるかもしれないが、なにせ我が家にテレビがないのでよくわからない。少なくとも、日本アフリカ学会の大会でも、取り上げる発表者はほぼいない。

今年の初め、幸いにこの島を訪れる機会を得た。奴隷の歴史を勉強する僕にとってこの島が興味深いのは、ここで完成されたアフリカ黒人奴隷を用いる商品作物の大量生産の仕組み(プランテーション制)が、南北アメリカ大陸に広まることで、大西洋奴隷交易がそのエンジンを全開にしたところにある。この島で生産されていたのが砂糖だった。1470年代にポルトガル勢によって「発見」されたこの島は、1517年には二つの製糖所を抱え、16世紀後半の砂糖栽培最盛期には推計で1万人強のアフリカ黒人奴隷がいたという。

西アフリカ・ガーナの首都アクラから空路1時間40分、夕暮れ迫るギニア湾に陸影が見えてきた。灯りがほとんど目視できない、そう思っているうちに飛行機は暗闇に紛れるかのように着陸した。

今月は、サントメ島の砂糖を巡る旅を書いてみたい。

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