国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

巻頭コラム

「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害」について 2005年1月13日刊行

山本博之

昨年12月26日に発生したスマトラ島沖地震では、広くインド洋各地が津波の被害に遭いました。とりわけインドネシアのアチェ州では、震源に近いこともあって、津波による甚大な被害が生じました。昨年3月まで北スマトラ州メダンに滞在してアチェ復興支援のお手伝いをしていた私にとって、今回のできごとは決して他人事ではありません。

スマトラ島にいる私の知人たちは、幸いなことにみな無事だったようです。しかし、何度か訪れた州都バンダ・アチェで、本屋で買った本にていねいにカバーをかけてくれた店番のお嬢さんや、突然大雨に降られて店の軒先で一緒に雨宿りしたおじさんおばさんなど、名前も連絡先も知らないけれど一緒に時を過ごしたアチェの人たちが今頃どこでどうしているのか、調べる術はありません。

今回アチェで大きな被害が出た原因として、震源地に近く津波の規模が大きかったという自然要因のほかに、アチェが長年の紛争の末に戒厳令下にあったことがあるように思います。国軍・警察はアチェを囲い込んで外部世界から閉ざし、人や物や情報の動きを管理してきました。治安維持がすべてに優先され、アチェの人々には十分な情報が与えられていませんでした。今回の被災はこのような状況で起こりました。また、救援・復興の現場でも、国軍・警察はしばしば人道支援より治安維持を優先し、外国人からアチェを囲い込もうとし、そのため救援・復興活動が一部で妨げられ、被害の拡大を許しています。

今回、救援・復興支援のために多くの外国人が現地入りし、それを通じてアチェの情報が少しずつ外に出るようになっています。そこで、それらの情報を集めて整理し、「2004年スマトラ島沖地震津波 関連情報」というホームページを通じて発信することにしました。

2004年スマトラ島沖地震津波 関連情報

ご覧いただけば明らかですが、このホームページにはカラフルな画像が一切なく、ひたすら文字が並んでいます。全部通して読んでいただかなくてもかまいません。INDEX(目次)を一通り読んでいただけば、今アチェで何が起こっているのか、おおよその仕組みがわかるように作ったつもりです。

未曾有の災害に直面したアチェも、復興に向けて徐々に動き始めています。やがて今回の津波被害から立ち直ったとき、アチェは被災前の姿に戻るのか、つまり国軍・警察が人や物や情報を囲い込んでいるアチェに戻るのか、それとも人々が活力に溢れる新しいアチェを作り出すのか。それは、今後のアチェ復興のなかで、アチェを再び囲い込んで閉ざそうとする動きに対し、世界の人々がアチェの状況にどれだけ関心を向けるかにかかっています。私たちが発信する情報が、そのためのささやかな助けになることを祈っています。

山本博之(地域研究企画交流センター助教授)

◆参考サイト
2004年スマトラ島沖地震津波 関連情報(インドネシア・マレーシア)
2004年スマトラ島沖地震津波災害
アチェITメディアセンター
アチェの津波被災に関する総合情報ページ(インドネシア語)

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民博では、昨年末に起きたスマトラ沖大地震及びインド洋津波により被害を受けた地域への救援金募集活動を開始しました。同館は、日本における世界の民族学・文化人類学に関する研究拠点であり、被災を受けた地域へもフィールドワークを行うなど調査・研究と関連深いことから、第1段階として来館者及び教職員に対して1月25日まで支援及び協力を呼びかけ、日本赤十字社を通じて人道的支援を行います。

また、それ以降においても、フィールドワークで得た同地域の被災状況及び研究成果をシンポジウムや講演会を通じ社会に認識してもらうよう開催し、研究活動による人道的支援を行う予定です。
http://www.minpaku.ac.jp/common/tsunami.html

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★「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害」関連サイト
日本赤十字社「スマトラ島沖地震救援金募集」
日本ユニセフ協会「スマトラ沖地震・津波緊急支援情報」
外務省「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害」
アサヒ・コム「写真特集 スマトラ沖地震」
気象庁「津波発生の仕組み」
産業技術総合研究所 活断層研究センター「インド洋の地震・津波」
アジア防災センター
THAITSUNAMI.com