国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

育児用寝台 2013年3月15日刊行

上羽陽子

3月14日から始まった特別展「マダガスカル 霧の森のくらし」では、約60点の編みものが展示される。これらは、マダガスカル中央高地の東部に居住するザフィマニリの女性たちが、家事や育児の合間に身近に生えている多種類の草を使って、編みあげたものである。女性たちは、材料となる草の太さや堅さ、弾力性を考慮して、帽子や敷物、カゴなどそれぞれの用途に適した編み材を選択している。

ここで、紹介する育児用寝台はマダガスカル語でフンビと呼ばれる。カヤツリグサ科の草を叩いて平らにし、組み編みした敷物5枚を、木枠に縫い合わせたものである。母親は、誕生直後の乳児とともに出産後1ヶ月ほど、この寝台の中で生活する。煤や埃、虫などからの物理的な保護のほかに、邪視(眼差しや視線に宿る力から災いをもたらすという信仰)を避ける意味もある。子どもが大きくなると解体されて、床に敷くなど日用で使うことが多い。こうしてできた手づくり品が育児のためにつかわれるのは、マダガスカルでも数少ない習慣である。

今回の特別展では、展示資料を五感で感じてもらう工夫を試みている。その一つが「五感で確かめるものづくり」コーナーである。育児用寝台もそこに置かれ、中に入ることができるようになっている。草の香りや触感を確かめながら、じっくりとフンビを味わっていただきたい。そこから、ザフィマニリの暮らしとものづくりの世界を感じとっていただければと思う。

上羽陽子(文化資源研究センター助教)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:番号なし(※特別展終了後、みんぱくに寄贈予定)/資料名:育児用寝台(フンビ)

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◆関連ページ
特別展「マダガスカル 霧の森のくらし」(2013年3月14日~6月11日)