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デジタルで見る衣食住

(1)近代日本の身装文化 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年9月8日刊行

丸川雄三(国立民族学博物館准教授)


腹這いの姿勢で手紙を書く女性。後ろには蚊帳が見える=「近代日本の身装文化」より。井川洗厓筆、1914年

 近代の日本において、人々はどのような衣服を身につけ、どんな振る舞いをしていたのだろうか。明治から大正期、家庭の日常が写真に残されることはまだまれであった。

 当時の様子を知る手がかりを与えてくれるデータベースが、今年5月に国立民族学博物館(民博)から一般に公開された。「近代日本の身装文化」(http://shinsou.minpaku.ac.jp/)は、明治維新以降、約80年間にわたる日本の人々の身体と装い(身装)の文化変容を、当時の新聞小説挿絵や雑誌に掲載された写真などの豊富な図像とともに眺めることができる画像データベースである。

 例えば蚊帳を吊(つ)る部屋で手紙を書く女性の絵には、「腹這(はらば)いに近い姿勢で日常の作業をすることはめずらしくなかった」との解説がつく。机のある生活に慣れた現代人には意外にも思える情景だが、そこに当時の人々の暮らしぶりを見ることもできるだろう。

 これらの図像は、身装文化を研究する大丸弘・民博名誉教授と高橋晴子・同外来研究員が、30年以上にわたり調査収集した資料の一部である。

 今回このうち5000件を一般に公開した背景には、研究成果を広く社会に還元すべしとのふたりの強い思いがある。デジタル技術に基づく文化研究資料の共有と継承が、これからの博物館には期待されている。

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