国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2006年6月24日(土) ~6月25日(日)
公開共同研究会「北アメリカ先住民の開発」

  • 日時:2006年6月24日(土) 13:00~/6月25日(日) 10:00~
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
 

目的

国立民族学博物館では、機関研究のひとつとして「文化人類学の社会的活用」に関する研究を、現在、実施中である。この研究の一プロジェクトとして開発(援助)に関する応用人類学的な研究を進めるため、平成17年10月より共同研究会「開発と先住民族」(代表者 岸上伸啓)を開始した。この研究会では、1回ごとにテーマを絞り、シンポジウム形式で実施してきた。昨年度に実施された「アフリカの開発」に引き続き、「北アメリカ先住民の開発」と題する小規模なシンポジウムを開催したい。

開発援助とは、通常、豊かな国が貧しい国々を援助することであると考えられてきた。そして援助活動が、第3世界を中心に世界各地においてさまざまな社会変化を引き起こしてきた。人類学者は現地で、その変化を目の当たりにし、調査をするとともに、人類学的な知見をどのように活用すれば、より効果的な開発援助が実施できるかを考えてきた。そして欧米においては、人類学者が開発援助の実務家や助言者として活躍してきた。

今回、テーマとして取り上げる「北アメリカ先住民の開発」の問題は、「アフリカの開発」問題といくつかの点で大いに異なっている。第1に、北アメリカ先住民社会における開発援助は外国からの援助ではない。合衆国やカナダは発展途上国ではないが、その中に住む先住民は社会経済問題に直面している場合が多い。このためにそれぞれの国家による国内の先住民への開発援助が実施されている。第2に、合衆国やカナダの先住民の多くは、それぞれの国家との政治交渉やかつての条約締結によって「先住民族としての諸権利」が承認されている。その諸権利のもとで、自主的に開発を実施しているグループが存在している。また、その諸権利の獲得や実現をめざして、国家を相手に政治交渉に臨んでいるグループも存在している。この2点は、同じ開発の問題であっても第三世界の場合と大いに異なっているといえよう。

今回のシンポジウムでは、経済的に裕福な国民国家の中での先住民の開発に関して、事例報告をもとに検討する。すなわち、事例としてアラスカのメトラカトラ(リザーベーション)やカナダのヌナヴィク地域における先住民の自主的な社会経済開発、合衆国における現金収入を得るための先住民によるジュエリー制作やカジノ経営、国家や企業による天然資源の開発による被害問題や先住民の開発反対運動を取り上げ、北アメリカにおける先住民社会の開発について検討を加える。

プログラム

2006年6月24日(土)
13:00~13:15 問題提起 岸上伸啓(国立民族学博物館) →発表要旨 (PDF)
13:15~13:45 青柳清孝(元国際基督教大学) →発表要旨 (PDF)
「アメリカ・インディアン保留地のカジノ」
13:45~14:00 質疑応答
14:00~14:30 谷本和子(関西外国語大学) →発表要旨 (PDF)
「ナヴァホ社会における経済開発の諸相:クリーン・エネルギーと観光開発は持続可能な発展をもたらすか」
14:30~14:45 質疑応答
14:45~15:00 休憩
15:00~15:30 岡庭義行(帯広大谷短期大学) →発表要旨 (PDF)
「かわりゆく人々」から「自立する先住民」へ―アラスカ・チムシアンとダンカン・ソサイエティ・モデル―」
15:30~15:45 質疑応答
15:45~16:15 齋藤玲子(北海道立北方民族博物館) →発表要旨 (PDF)
「北西海岸先住民と観光―サケとトーテムポールを資源に」
16:15~16:30 質疑応答
16:30~17:00 伊藤敦規(東京都立大学) →発表要旨 (PDF)
「日本市場を通してみるホピ・ジュエリーの現代的諸相―グローバル化するアメリカ先住民美術工芸品市場における知的財産権保護という開発に向けて―」
17:00~17:15 質疑応答
2006年6月25日(日)
10:00~10:15 事務連絡・情報交換
10:15~10:45 岸上伸啓(国立民族学博物館) →発表要旨 (PDF)
「カナダ・イヌイット社会における社会・経済開発―ヌナヴィク地域の事例を中心に―」
10:45~11:00 質疑応答
11:00~11:30 立川陽仁(三重大学) →発表要旨 (PDF)
「カナダ太平洋沿岸におけるサケの養殖業の展開と先住民―バンクーバー島北部を事例として―」
11:30~11:45 質疑応答
11:45~13:00 昼食休憩
13:00~13:30 玉山ともよ(総合研究大学院大学) →発表要旨 (PDF)
「ニューメキシコ州における先住民の被曝問題」
13:30~13:45 質疑応答
13:45~14:15 井上敏昭(城西国際大学) →発表要旨 (PDF)
「アラスカにおける地下資源開発と先住民:石油開発をめぐるグィッチン社会の事例から」
14:15~14:30 質疑応答
14:30~14:45 休憩
14:45~16:00 総合討論