2.X線写真の見方
 
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X線はどんなモノの中でも透過できるわけではありません。モノの中を透過するX線の量はつぎの3つの要素で決まります。

  1. 照射するX線の強弱
  2. X線を当てるモノの材質
  3. X線を当てるモノの厚さ

鉛,銅,鉄,真鍮,アルミ,木,塩化ビニル,紙をX線で写真に撮ってみました(図1)。厚さは木だけが 1 mm,その他はすべて 0.3 mmです。

図1 モノの素材とX線写真

上の段は弱いX線(25 kV),中の段は中位のX線(40 kV),下の段はやや強いX線(60 kV)で撮影したものです。木や紙は,中位の強さのX線でも像が真っ黒になり,かたちがまったく見えません。X線が完全に透過してフィルムを感光させてしまったためです。逆に,金属に弱いX線を当てても,フィルムはほとんど感光せず真っ白です。強いX線を当てると,金属の種類によって差が生じています。X線の透過のしやすさは,モノを構成している材質の分子量が大きく影響します。

同じ厚さのアルミ板を少しずつずらせながら5枚重ねてX線を照射してみました(図2)。同じ材質のモノであれば,厚さが薄いほどX線が通りやすいので,フィルムが黒く感光しています。

図2 モノの厚さとX線透過量の関係

このことを数式で示すと,
Ix = I0e -μD

となります。Ixは透過してきたX線の量,I0は照射したX線の量,eは定数,μは材質の分子量で決まる係数,Dはモノの厚さです。すなわち,上記の1,2,3の要素がすべて組み合わさって,X線の透過しやすさが決まるのです。

X線写真を見たとき,白い部分があれば,そこはX線が透過しにくい材質でできているか,その材質でできた部分が厚いかのどちらかです。このことを基礎に,自然条件,文化的背景,伝統技術や技術史に関する情報,原材料となる動・植・鉱物などの物質としての特性などを総合的に判断して,モノにかかわる内部情報を取り出します。

(最終更新:1998年4月3日)

 
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