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鵜飼文化のこれから

(3)捕獲技術の継承 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年9月21日刊行

卯田宗平(国立民族学博物館准教授)


海岸壁に配置されたおとりのウミウ=茨城県日立市十王町で2017年5月、著者撮影

今年5月19日、私は茨城県日立市十王町の海岸壁にいた。ウミウの捕獲技術にかかわる調査のためである。現在、日本の鵜飼(うかい)では野生のウミウが利用されている。そのウミウを捕獲し、各地の鵜飼に送っているのが十王町のウ捕り師たちである。

ウミウは初夏に北海道や東北の沿岸域で繁殖し、冬になると四国や九州まで南下する。毎年春と秋に渡りをするウミウは、群れをなして海岸沿いを飛翔する。ウ捕り師たちは十王町の海岸壁に小屋を設け、飛来したウミウを捕獲するのだ。

捕獲すると一言でいっても簡単ではない。飛来しそうな気象条件を予測する知識や、ウミウに気付かれない技術、ウミウを各地に送るための運搬籠をつくる技術などが求められる。くわえて、いつ飛来するかわからないウミウを小屋の中でじっと待つという忍耐力も必要である。

十王町では2人のウ捕り師たちが「捕獲技術伝承者」として捕獲作業を続けてきた。しかし、次の担い手が見つからず、捕獲技術の継承が問題になっていた。こうしたなか、昨年4月から40代の男性が見習いとして捕獲技術を学んでいる。

鵜飼のウミウを捕獲するのは世界でも十王町だけである。ウ捕り師たちがもつ技術とその継承は、日本の鵜飼文化を維持していくうえで欠かせないものである。

シリーズの他のコラムを読む
(1)中国との文化交流
(2)繁殖技術の確立
(3)捕獲技術の継承
(4)鵜飼サミット