国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

地域研究に関する学術写真・動画資料情報の統合と高度化(2016-2018)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』 代表者 吉田憲司

研究プロジェクト一覧

目的・内容

日本の研究者による世界各地での現地調査の際に撮影された写真や動画などの画像資料は、世界諸地域の調査当時の実態を記録した貴重な研究資源であるとともに、日本の学術史を反映する学術遺産でもある。本研究支援事業の目的は、地域研究に関わる進行中の科研費プロジェクトで、その研究にとって過去に蓄積された画像資料のデジタル化・共有化が大きな貢献をなすものを技術的に支援し、研究の格段の進展を促すことにある。この事業を通じて、日本の海外学術調査に関わる写真・動画資料を集積したデータベース「地域研究画像デジタルライブラリ」を構築し、地域研究のさらなる発展に資するプラットフォームとして整備する。初期段階では、とくに早急な画像保存が求められる、乾板やネガフィルム、ポジフィルムのかたちで残された写真資料を優先するかたちでデジタル化し、地域研究に有用な日英のテキスト情報を付加することで、データの整理と国際的共有化を図ることとする。この作業は、広くプロジェクトの公募をおこない、「公募参加プロジェクト」を中核機関と連携機関が共同して積極的に支援するかたちで推進する。

活動内容

2017年度実施計画

本年度は、公募プロジェクトの募集を4月6日に開始し、応募の締切は6月9日に設定する。
そして、「地域研究画像デジタルライブラリ」全体を統括するプラットフォーム委員会のもとに置かれる「公募プロジェクト審査委員会」にて審査を行い、採択課題を決定する。審査結果については、平成29年6月末日までに通知する。募集件数については、画像点数によってカテゴリーを2つ設け、カテゴリーA(画像の数が1件あたり約5,000点程度)を5件程度、カテゴリーB(画像の数が1件あたり約500~1,000点程度)を3件程度、採択する予定である。
採択された公募プロジェクトに対しては、まず関係者を対象としたワークショップを実施し、資料の取り扱い、デジタル化、ドキュメンテーションに関する研修を行なう。その後、プラットフォーム技術支援者が画像資料(ネガ、ポジ、ガラス乾板)の所在地に赴いて資料の保存状態を確認し、資料を中核機関である国立民族学博物館(以下、「民博」という)に輸送するか、輸送せずに現地でデジタル化するかを判断する。そのうえで、民博もしくは現地において通し番号(ID)を付与したのち、民博において著作権の所在を確認して、写真資料の撮影者、著作権者、所有者ごとに、民博との間で「資料の整理、デジタル化、データベース化を行うこと」について、当該資料をリスト化し利用許諾もしくは著作権譲渡に関する覚書を交わす。
この手続きののち、①画像のデジタル化、②画像に付帯する基本情報のデータ化とデータベース化を行なう。デジタルカメラ等で撮影された写真などの既にデジタル化されているデータについては、IDの付与と基本情報の取得を行なう。データベースには画像の内容に関する基本情報の他に、デジタル化作業に関する情報として、画像のフォーマット、入力機器情報、解像度、記載日などが記録される。その後、民博において、各画像に対応した基本情報を入力する。フォーマットに含まれる項目は、①ID、②写真画像、③撮影者、著作権者、④撮影時期、⑤撮影地域(撮影当時の国名と現地名)、⑥民族名(同定可能な場合)、⑦地域・民族分類(OWC)、⑧文化項目分類(OCM)を用いた画像内容の記載、⑨記載日、⑩関連情報(参考文献等)、⑪自由記述欄(この欄は公募プロジェクト側で記入)などとなる。(いずれも日英併記)  こうして作成されたデータベースは、自由記述の際に利用できる用語集(多言語対応辞書)とともに公募プロジェクトに提供される。公募プロジェクトのメンバーはこのデータベースを用いて、逐次、入手できる情報を自由記述欄に追加し、科研の研究計画を遂行することになる。一方、公募プロジェクトによって入力された内容は、民博サーバ内のデータベースに反映され、著作権者との間で、あらためて個々の画像についての公開・非公開の判断を含め、利用の範囲を確認したうえで、一般公開される。

〔中核機関〕国立民族学博物館、〔連携機関〕国立情報学研究所、京都大学東南アジア地域研究研究所、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、東京大学東洋文化研究所

2016年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、5件の課題を採択し、採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究代表者・分担者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約12,000点、データベース化・約24,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。 その他の実績として、下記のような活動を実施した。
①2016年6月13日(月)に京都大学(稲森財団記念館)に於いて、公開フォーラム『写真が開く地域研究』を開催し、プロジェクトの趣旨を説明するとともに、地域研究画像データベースの活用例について特に技術支援の在り方を中心に検討し、本プラットフォーム事業を通じた写真資料の共有化による地域研究の展開の可能性について議論した。
②本プラットフォームで整理した写真データと研究成果を用いて、中部大学民族資料博物館で2016年12月5日~2017年3月8日に展示「アフロ・ユーラシア 内陸乾燥地文明展 黒アフリカ・イスラーム文明から考える」の開催、2017年1月から2月にかけ、奈良と東京で、写真展「世界遺産ナンマトル-太平洋の巨石文明の痕跡を求めて-」(関西外国語大学、NPO法人パシフィカ・ルネサンス主催、東京文化財研究所協力)が開催されるなど、科研プロジェクトの成果公開とそれによる成果の検証が可能となった。