国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

20世紀前半ペルシア湾における「奴隷解放調書」の研究

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究(B) 代表者 鈴木英明

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、20世紀前半のペルシア湾で作成された「奴隷解放調書」にみえる奴隷の証言を体系的に用い、奴隷制・交易の実態と奴隷の行動パタンの解明にある。「奴隷」とされた人びとの証言を網羅的に収集し、証言を構成要素に分解し、それをデータベースにまとめたうえで分析を施し、所期の目的を達成する。
具体的な研究の展開としては、A.証言の資料的価値を明らかにし、B.質的データの量的把握に関する方法論を確立したうえで、C.20世紀前半のペルシア湾における奴隷制・交易の実態、奴隷の行動パタンを解明する。となる。
本研究の期待される成果としては、①当該地域における奴隷制・交易の実態解明と奴隷の行動パタンの解明によって当該地域の歴史研究や20世紀前半を対象とした奴隷研究への貢献のみならず、②証言分析の方法論を確立することによって、奴隷制・交易研究一般への貢献が想定される。

活動内容

◆ 2018年8月より転入

2019年度実施計画

本研究課題最終年度に当たる当該年度では、成果の最終報告論文の完成を目指し、データベース分析と実地調査とを行う。実地調査については、本年度はペルシア湾岸諸国の北部(カタル、バフライン、クウェイト)を対象にして行う。2020年6月にイギリスで開催される英国中東研究協会British Society for Middle Eastern Studies年次大会で最終成果報告に相当する、とりわけCに関連する口頭発表を応募し、夏の調査を踏まえて、最終成果報告としてのCに関する論文執筆を行う。

2018年度活動報告

 平成30年度は、5件の口頭発表を行い、1冊の共著と1本の研究論文を刊行した。特に、3月にリヨンで開催された "Capture, Bondage, and Forced Relocationin Asia (1400-1900)"(アジアにおける捕縛、拘束、そして強制的移転(1400-1900)) と題された国際ワークショップにおいて、"Bonded labour in thefirst half of the 20th century Persian Gulf: A quantitative approach"(20世紀前半ペルシア湾における拘束労働者――数量的アプローチ)と題して、これまでの研究成果に基づく方法論に関する報告を行い、多様な角度からのコメントを受けたことは非常に大きな成果であるといえる。現在、コメントを踏まえた論文執筆に取り組んでいる。また、同月には京都大学東南アジア研究研究所において、「20世紀初頭のペルシア湾におけるイギリス帝国と奴隷制ーー奴隷解放調書をめぐってーー」と題する報告を行った。これについても、特に政治学関係からの有益な助言を得ており、今年度は本研究を様々な角度から検討することができた。
 また、イギリスにおける史料調査によって収集資料を拡大し、その分析作業が進展したことも重要な成果であると考える。