国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

東南アジアにおけるサトイモの遺伝的多様性のマッピングによる栽培化モデルの検証(2017-2020)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 ピーター J. マシウス

研究プロジェクト一覧

目的・内容

アフリカ、アジア、オセアニア、アメリカ大陸の熱帯域と温帯域で見られるサトイモ(C.esculenta)は根菜であり葉野菜である。東南アジアの低地の道ばた、みぞ、運河、池や川の土手には野生サトイモが生育している。人々が土地に手を加えることで出現したあらたな空間で、栄養繁殖や種子によっておおいに繁茂し、地元の人々の食材として、また飼っているブタのエサとして自由に利用されており、東南アジアでもっとも豊富な野生の食糧源とも言える。にもかかわらず、この野生サトイモに関する研究はほとんどなされていない。新旧2つの栽培化のモデルを検証するために、このプロジェクトでは(ⅰ)東南アジアの野生サトイモの分布をマッピングし、(ⅱ)形態学的多様性を記録し、(ⅲ)DNA 分析に必要な標本を採集し、(ⅳ)過去の交配を知るために、採集した標本を栽培種サトイモや他のサトイモ属の野生種とDNA 分析により比較する。

活動内容

2018年度実施計画

1.2017年度に約200の遺伝子座のシーケンシングを行った。そのうち成功しなかったC. formosanaの15の遺伝子座について再度シーケンシングを行う。台湾で収集した標本は典型的な自生する個体群であり、重要な参照資料となることが期待される。
2.2017年度にベトナムのメコン川流域および紅河流域でハノイのInstitute for Ecology and Biological Resources(IEBR)とともに収集した約100の標本については、2017年度中にDNAの抽出まで終えた。今年度はこの標本のシーケンシングを行う。
3.2017年度に中国で民族大学の民族植物学研究所とともに収集し現地で保存している約30の標本について、民族大学に赴き、DNAを抽出し、シーケンシングを行う。
4.中国南部、雲南省で現地研究者2名(民族大学)と野外調査、標本の収集を行う。[4月下旬から5月上旬]
5.タイのバンコク周辺地域で現地研究者2名(Kasestart University)と野外調査、標本の収集を行う。[7月中旬]
6.インドで現地研究者2名(the Central Tuber Crops Research Institute (CTCRI))と野外調査、標本の収集を行う。[11月中旬]

2017年度活動報告

(a)サトイモの自生群におけるDNA配列変異の分析
台湾、フィリピン北部ですでに収集していたColocasia formosanaの標本についてDNAを抽出し葉緑体と核の遺伝子座のプライマーを使い配列を得た。これにより、 C. formosana と他のColocasia 種を識別することが可能になり、また、C. formosana内にかなり多様性があり、フィリピンのものは台湾で広範に見られる変異株と最も類似性があることがわかった。台湾とフィリピンの類似性と地理的隔離はこの共通して見られる変異株が年代的に古いもので長く安定していることを示す。アジア太平洋地域の栽培種についてこれまでに出版したデータと比較すると、栽培種は選択、栽培化、拡散を通じて厳密な遺伝子の隘路を通過したことを示している。

(b)野外調査と標本収集
ベトナムと中国南部のメコン川流域、紅河流域、珠江流域で野外調査を行い標本を収集した。形態学的特徴とColocasia種の同所性から、交雑種とみられる自生群がベトナム北部と中国南部で見つかった。また、自生する野菜として、豚の餌としてコメンサルワイルドなサトイモが利用されていることが確認できた。これらの標本についてはDNAの抽出を開始しており、葉緑体と核の遺伝子座のシーケンシングに取り掛かるところである。